登美ヶ丘講演

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第8回 (平成23年12月17日)

「東日本大震災と日本のエネルギー問題」 地球環境産業技術研究機構(RITE) 研究所長 山地 憲治 氏

第8回は、地球環境産業技術研究機構(RITE)の山地憲治研究所長をお招きしました。
まず語られたのは、エネルギー政策の基本目標の再確認について。安定供給・経済性・温暖化対策の3点が福島原子力発電所の事故後も依然として基本の目標であるが、今回の事故によって「安全性(安心)」という点が大きく意識されるようになりました。科学には不確実な領域があり、そこでは感性に基づく想像力が社会の意思決定に大きく影響することになり、人々は今、科学が進めてきた発展を否定する方向に動いています。しかし、ここで大事なことは、「知識を最大限に生かすことだ」と山地先生は述べられました。
次に、先生は福島第一原子力発電所の苛酷事故の発生過程を説明され、原発事故における「深層防護の思想」(第1層:異常な事象の発生防止、第2層:事故への進展防止、第3層:炉心損傷防止、第4層:過酷事故対策、第5層:防災対策)について述べられました。特に、第4層:過酷事故対策としての「冷やす・閉じ込める」ができなかったことを強調されました。
そして、最後に「今後のエネルギー問題」について。発電電力量の内訳から考えると、省エネや再生可能エネルギー(太陽光・風力・地熱・水力等)だけでは原子力の穴を埋めることは難しく、今後は徹底した省エネ、新再生可能エネルギーの最大限の導入、化石燃料の活用、情報との統合によるエネルギーシステム改革等に努力しながらも、原子力という選択肢は残ると述べられました。
質疑応答では、「スマートなエネルギーシステムのひとつとして、ソーラーカーの一般普及は実現可能か」、「放射能リスクや他の発電方法があるにもかかわらず、やはり原子力は必要なのか」などの質問に、丁寧な解説を加え、答えてくださいました。最後に代表生徒が花束を贈呈し、お礼とともに「科学的知識だけでなく、感性も人々の行動や心理に大きく影響させるということが印象に残りました」と感想を述べました。