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◇2021-12-18 (土)

奈良学園公開文化講座第50回《仮名の魅力とその美》を開催しました

  • 奈良学園公開文化講座第50回《仮名の魅力とその美》を開催しました

12月18日(土)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、奈良学園公開文化講座第50回《仮名の魅力とその美》を開催しました。講師は高等学校にて書道教員の経験もあり、現在、書家でもある奈良学園中学校・高等学校校長の河合保秀先生です。セミナールームには河合先生の作品が飾られています。


最初に河合先生から参加者の皆さんに、「右と左という漢字の書き順がどうして違うか、ご存じですか?」という質問が投げかけられ、現代でも印章などに用いられている古代文字の篆書体の「右」「左」という漢字を使って、書き順の違いは左右、それぞれの漢字の成り立ちによって違っているということを、スライドの絵を使ってわかりやすく解説されました。他にも、大きな道が交差している象形文字から人の行くところ「行」という漢字ができたことなど、様々な漢字の成り立ちについて、参加者の皆さんは興味深げに解説を聞かれていました。


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つづいて、仮名の成り立ちについて説明がありました。1世紀頃、中国から漢字が伝えられると、文字を持たなかった日本人は「漢字の音」を借りて、自分たちの言葉を書き記す工夫を始めます。「仮名」の語源は、「かりな→かんな→かな」と変化したものだそうです。700年代には『薬師寺仏足石歌碑』や『正倉院万葉仮名文書』に見られる、漢字の楷書や行書で表記する「男手(真仮名)」が現れ、900年代には平安時代の代表的な書である『秋萩帖』に見られる「草仮名」に発展し、1050年頃には、『古今和歌集』の現存する最古の写本である『高野切』に見られる「女手」と変遷し、仮名が完成していきます。その時代の文字を取り巻く状況ですが、法隆寺五重塔の天井の組木には、当時の大工が書いたであろう万葉仮名の落書きが発見されてることから、仮名はすでにその頃、庶民にも浸透していたと考えられるとのことです。


現在の「平仮名」は、明治33年に統一、制定されました。「平仮名」の「平」は平易(簡単な)という意味で名づけられました。また、「片仮名」の「片」は「一部」という意味があり、漢字の一部から成立した仮名のことを言います。
「仮名の書」には現代の統一された「平仮名」と、文字がきれいにつながるように、それ以外の平安時代から使われてきた仮名である「変体仮名」を用います。


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平安時代中期から、鎌倉時代初期に書かれた和歌集の写本など、仮名を中心とした筆跡で、時代の中で淘汰されたものは、とくに美しさを備えており「古筆」と呼ばれています。その時代、紀貫之が「土佐日記」を仮名で著したり、平安貴族の教養として歌集が盛んに書写されたりしたために、たくさんの優れた古筆が生み出される背景がありました。現存している古筆に切断されたものが多いのは、安土桃山時代に千利休などによって完成された「わび茶」の茶室の床の間に飾る「茶掛け」として、掛け軸に装丁されてしまったものが多いからだそうです。


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古筆(仮名)の魅力として、連綿法を用いて文字が続けられていて流動的な美しさがあらわされていることと、文字の簡素さと複雑さ、字間の広さと狭さ、墨量の少なさと多さ、線の細さと太さなどの疎密の変化があります。それらを総合的に鑑賞すると、古筆やそれに影響を受けた現代の書は、平面的でありながら立体芸術であることが感じられます。


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「書を学ぶ」ということは、自己研鑽と、書の古典に対峙しそれを手本として自らの書写能力を高めていく学習法である「臨書」が大切であると、河合先生は言われています。また書家として、古典、古筆に立脚した様々な「仮名の美」を感じ、異質なものの中に調和のある書表現を目指していきたいとのことでした。河合先生の作品は今回の日展で特選に選ばれ、鷹山という雅号にて展示されます。


参加された皆さんからは、「これからは仮名の書を鑑賞する際、こちらの心の持ちようも変わると思います。博物館などで古筆を鑑賞する機会もあると思いますが、これからは古人と対話する気持ちで見てみたいと思います。」、「年末から年始にかけて、書に親しむ機会が増えますが、これからは教えていただいたことを胸に、心静かに書に向き合ってみたいと思います。」などのご感想が聞かれました。


庭園の木々はすっかり葉を落とし、池や水鉢にその姿を映しています。そのような中に山茶花がはかなげに咲き、万両の実の赤さが映えています。
志賀直哉旧居では「奈良学園公開文化講座」を月1回、開催しています。詳しくはこちらをご覧ください。

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