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◇2021-12-20 (月)

日本人の美意識―<時の推移>に寄せる鋭敏な感受性―

  • 日本人の美意識―<時の推移>に寄せる鋭敏な感受性―

12月20日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、特別講座白樺サロンの会第6回《日本人の美意識―<時の推移>に寄せる鋭敏な感受性―》を開催しました。
講師は関西大学名誉教授の井上克人先生です。


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経年の末、剥落し朽ち果てていくものこそ美しいとし、あるいは円空の木彫仏のように不完全な残缺の美を好む日本人特有の美意識についてお話しをいただきました。
農耕民族であった日本人は古来より、移りゆく自然への敬意を常に感じながら生活し、「天然の無常」感が培われてきたと教えていただきました。
そうした中から、儚く滅びゆくものこそ美しいと感じる日本人特有の美意識として備わっているそうです。
それは鴨長明の『方丈記』や『平家物語』の冒頭の世界観の中に、如実に描かれていると言えるようです。


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また後半では、日本人が持つ、時の推移に寄せる美意識として、「わび」と「さび」についてお話しをいただきました。
「わび」は元来、『万葉集』や『古今和歌集』の時代では、「わびしい」という表現にあるように、精神的な窮迫感を伴っていたそうですが、禅の精神を踏まえた茶道の発展に伴い、無欲無心で「寂たる幽玄の趣」を表す言葉として定着していったそうです。
また「さび」については、主に「事象が廃亡の境を目指して進行する状況」を表すものであり、いわば日本人特有の「滅びの美学」であると教えていただきました。

アジアの寺院に祀られている仏像の多くは、けばけばしいほど黄金色のお姿に彩色されていますが、日本の場合、仏像が朽ち行く様にむしろ重さやありがたさを感じるのは、そういった美意識的背景があるからだそうです。


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旧居の中庭の足元を見ると、寒風が吹く中でフカフカとした苔が絨毯のように敷き詰められています。
苔むす様を愛でたり、その上に落ちたサザンカの真紅の花びらや朽ちかけたモミジの葉を見るに心が揺れ動くのは、今日お話しをしていただいたような美意識によるものなのでしょうか。

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