学校法人奈良学園

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◇2021-11-29 (月)

11月の志賀直哉旧居

  • 11月の志賀直哉旧居

秋の空のキャンパスに描かれた雲が、滲んだ尾を描きながら北から南方向へ流れ始める晩秋となりました。
旧居の庭の柿の木も、ほとんどが落ち終わり、カラスに啄まれた実の黒々とした残骸が、冷えた風に揺れているのを見ると、木々も冬支度を始めたようです。

晩秋と言えば、志賀直哉のいわゆる山科四部作と言われている中で、若い女性に心を奪われた主人公を描いた小説『晩秋』を思い起こします。
一般に夏に生まれた恋の行方は、実りの季節を過ぎて、晩秋に至る頃に終わるとよく言われています。
この小説からは、不実な恋心の結末を象徴するような小寒い空気の中に畳み込まれた物悲しさを感じます。

また、この季節を描いた『十一月三日午後の事』という短編小説があります。
まさに今の時節をモチーフにしています。
元々は『散歩』と題され、ノートに書かれていた草稿であったそうです。
その中で、主人公がこの時期にしてはいささか暑い日に、鴨を買いに行く途上で、兵隊の演習風景に遭遇し、その後、鴨屋で無邪気な鴨の様子を見て、殺して食すには忍びないと感じます。
生命の活動が鈍る冬を前にして、生きるものの命について思うことの意味や、それと兵隊の無機質とも言えるような演習と対比させようとしているのでしょうか。


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今、旧居の庭では、次の季節につなぐ赤色基調の草木たちが賑わいを作っています。
先週まで庭の余白を真っ赤に染めていた紅葉は、旧居を訪れる方々の目を楽しませてくれていました。
またナンテン(南天)が、落ちこぼれるほどの数の赤い実を実らせています。


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木々の根元や苔の間からは、お正月にふさわしいマンリョウ(万両)が赤い実をつけています。
やがてヒイラギ(柊)も、赤い実をつけることでしょう。


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ところで、志賀直哉旧居は年末年始、12月28日(火)から、翌年1月5日(水)まで、閉館させていただきます。

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