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◇2021-11-16 (火)

志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《芥川龍之介「玄鶴山房」 ―原稿から見えてくるもの― 》を開催しました。

  • 志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《芥川龍之介「玄鶴山房」 ―原稿から見えてくるもの― 》を開催しました。

11月15日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて白樺サロンの会《芥川龍之介「玄鶴山房」 ―原稿から見えてくるもの― 》を開催しました。
講師は奈良女子大学 准教授の吉川仁子さんです。

「玄鶴山房」は芥川が死の半年前に執筆した短編で、阪本龍門文庫に自筆原稿が収蔵されています。講座では「玄鶴山房」のあらすじを解説するとともに、原稿と雑誌掲載時の異同や原稿に振られた番号などに着目し、芥川が執筆に苦心した痕跡や作品に込めた意図を考察しました。


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玄鶴山房に住む堀田玄鶴は年老いた「画家」で、画家としては無名であるものの特許と地所売買で得た豊かな資産があり、肺結核で臥しています。山房には妻や娘夫婦、女中、看護婦の「甲野」がいますが、玄鶴を真に思いやる人は誰もいません。そこへかつて玄鶴に囲われていたお芳が息子とともに看病のため訪れますが、家の中の空気は険悪になるばかりです。お芳が去ったあと玄鶴は自らの人生を「浅ましい一生」と振り返り、自死を企てるものの失敗、その後衰弱死します。盛大な葬儀が営まれ、馬車が火葬場を出る時、道端には黙礼して馬車を見送るお芳の姿がありました。


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自筆原稿を確認すると玄鶴は「画家」ではなく「書家」であり、完成原稿や草稿からも初期は書家の設定であった痕跡がうかがえます。「画」の旧字体「畫」と「書」が植字の際に間違えられ、そのまま見落とされた可能性は捨てきれません。また掲載状況や原稿の番号、書簡からは、全6章のうち第3章、お芳が山房を訪ねる場面で執筆につまずいたことが浮かび上がってきます。吉川先生は「この作品の焦点は書や画などの芸術ではなく、人間として生きる上での苦痛にあったのではないか」と講座をしめくくりました。


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庭園の木々が紅葉を始めています。モミジは葉先が赤くなってきましたがまだ緑を残しており、グラデーションがきれいです。
志賀直哉旧居では「白樺サロンの会」と題して月1回、公開講座を開催しています。詳しくはこちらをご覧ください。

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