




◇2026-03-18 (水)
2026年3月6日、志賀直哉旧居にて、
奈良団扇(うちわ)の老舗「池田含香堂」の当主・池田匡志氏を講師に迎えた公開講座が行われました。
テーマは「奈良団扇職人と考える『伝統』」です。
お店の場所は、三条通から奈良公園へ向かう賑やかな通り沿い。奈良漬けの老舗「今西」の隣に位置し、
近くにはあの有名な餅つきの和菓子店もあります。
私は毎日このお店の前を通って通勤しているのですが、なかなか中へお邪魔する機会がありませんでした。
そんな「奈良公園民」の私も、今回の講座はとても興味深くお話をうかがうことができました。
奈良団扇のルーツは、遥か奈良時代まで遡ります。
もともとは春日大社の儀式で使われる神聖なものでしたが、江戸時代に入ると、
庶民が涼をとるための日用品へと姿を変えていきました。
伝統工芸品としての団扇は、京都をはじめ全国にありますが、
奈良団扇の際立った特徴は、「美しさと実用性の高度な両立」にあります。
繊細な透かし彫りだけでなく、団扇としての機能性にも優れます。
しなりと軽さで強い風を生み、耐久性にも優れているのが奈良団扇の特徴です。
講演の前半は、奈良団扇の制作過程を中心にお話いただきました。
下の写真は「叩き貼り」で13工程ある作業の一つです。
講座の後半では、伝統工芸が直面している課題が取り上げられました。
一般的に伝統工芸の問題といえば、職人の経済的な問題や後継者不足が語られがちですが、
池田氏によればそれ以上に深刻なのが和紙などの材料不足のようです。
100円ショップであらゆる日用品が手に入る現代において、
手仕事によるモノの価値をいかに理解・納得してもらうかを考える必要もあります。
池田氏はご自身を「作家ではなく、あくまで職人」だと定義されます。
しかし、その姿は寡黙な職人ではありません。奈良に根ざした伝統工芸の魅力を伝える活動なども精力的に行っています。
保守的な職人なら秘匿するであろう制作工程もオープンにし、手仕事の価値の背景を世間に伝える努力を惜しまれません。
こうしてはじめて、職人の技術に裏打ちされた工芸品が商品としての価値を持ち続けるだろう、とのことでした。
講座終了後、個人的に気になっていたことを池田氏に伺いました。
世界各地からの外国人観光客で溢れかえっている奈良公園ですが、
「どこの国の方が奈良団扇に興味を示されますか」という質問に対し、
返ってきた答えは意外にも「スペイン」でした。
池田氏曰く「フラメンコで扇子を使う文化があるからかもしれません」。
おお、なるほど!
奈良団扇。日本人の方も奈良土産にいかがでしょうか?
学校法人奈良学園 経営情報部 tantana