学校法人奈良学園

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◇2025-05-23 (金)

4月の志賀直哉旧居

  • 4月の志賀直哉旧居
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 晩春のやわらかな陽光に包まれる4月、サンルームから旧居の庭を眺めると、奥に淡い紫の藤が花開いています。
風に揺れるその姿は、古来より「子孫繁栄」「長寿」「高貴さ」を象徴する植物として、人々に愛されてきました。
藤はその美しさと生命力の強さから、藤原不比等以降、藤原氏の家名として使われてきました。
藤原氏にゆかりの深い春日大社の境内には、藤の名所として知られる「砂ずりの藤」があります。

 旧居の二階の窓から御蓋山(ミカサヤマ)を臨むと、大木に絡む藤が、至る所に見受けられます。
春日大社の背後にそびえる御蓋山は、藤原氏にとっても神聖性の象徴として、氏神を祀る神聖な山です。
春日大社や御蓋山の近場に居を構えた志賀直哉もまた、この季節の奈良の藤に季節の移ろいを感じたことでしょう。

 1938年(昭和13年)に志賀直哉が執筆した、奈良での生活や自然への深い愛着を綴った作品『奈良』(志賀直哉全集 第6巻)の中に、「五月の藤、それから夏の雨後春日山の樹々の間から湧く雲」と、愛おしむように記しました。
自然のうつろいと人生における時の流れとを重ねるかのようです。
旧居の藤の花が揺れる光景の向こうに、志賀直哉が愛した奈良の春と、遠い古代から変わらぬ山の気配を感じます。
そんな特別なひとときが、旧居の庭には流れています。

 また、旧居の庭の梅の枝には、昨年は気候の影響で実りの少なかった実が実り始めていまます。
志賀直哉が『赤城にて或日』の中で「赤城には三種の躑躅(ツツジ)があつて〜」と、その美しさを綴ったツツジの花も、旧居の至る所で満開を迎えようとしています。

旧居の庭を歩いていると、季節が次へと確かに移りゆくのを感じます。

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