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◇2025-02-24 (月)

2月の志賀直哉旧居

  • 2月の志賀直哉旧居
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冬の終わりを告げるような湿った牡丹雪が静かに舞う旧居。


 旧居から歩いて数分のところにある東大寺の二月堂では、3月に入ると春を祝う法要「お水取り」が始まります。「お水取り」は正式には「修二会(しゅにえ)といい、本尊である十一面観音菩薩に罪過を懺悔して五穀豊穣や除災招福を祈る仏教法会だそうです。


 一般に14日まで続く「お水取り」が終われば春の温かさが訪れると言われています。3月に入る間際には陽光も温かく感じるようになり、三寒四温の時期とは言われながら、しばらくは寒さが続くようです。


 雪と言えば、志賀直哉も作品の中に何度か雪が登場しています。特に1920(大正9)年に読売新聞に発表した「雪の日」の中で「雪には情緒がある。その普段忘れられている情緒が湧いてくる。これが自分を楽しませる」と綴っています。


 志賀直哉は、自身の作品について「無駄のない簡潔な文体で、できるだけ真実に近づくこと」を重視していたようです。「雪の日」においても、静かに流れる何気ない日常の中で感じ取ることを、素直に書き綴っている作品です。また志賀直哉の「小説の神髄は心理描写にある」という考え方が色濃く反映された作品であるとも言えます。この作品は日記として記録を記述しているのですが、行間には幼少期の体験や家族関係が投影されているように感じます。


 雪が降ることで世界が白一色に染まり、静けさが際立ちます。これは、文学作品だけではなく、多くの芸術作品において「静寂」「孤独」「神秘性」「純粋さ」や「無垢」といった感情を表現する素材として使われています。


 旧居の庭の梅の枝から、今まさに開花する直前の膨らんだ蕾に、透明に氷柱化した雪がぶら下がっています。冬最後の雪景色の中から、新たな季節の息吹が芽生えてきているようです。

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