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◇2025-01-27 (月)

1月の志賀直哉旧居

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 志賀直哉の代表作と言えば誰もが『暗夜行路』と答えます。『暗夜行路』は、日本文学に親しんだ人だけではなく、中学校の教科書にも掲載され、高校入試問題の題材としても登場しています。また1959(昭和34)年には、豊田四郎監督によって、池部良や山本富士子が出演して映画化されています。


 『暗夜行路』は雑誌『改造』に1921(大正10)年1月号から8月号まで前編が発表され、後編は、1922(大正11)年1月号から1937(昭和12)年、ここ旧居にて書き上げられました。前後編が発表されたのが、いずれも1月ということで、今日のように旧正月を目前に、志賀直哉は掲載された印刷物をどのような気持ちで手にしたのでしょうか。


 小説家の大岡昇平が「近代文学の最高峰」と称えたこの小説は、実に25年間を費やして執筆されました。なぜ、これだけ年月を費やして書かれたのかについては諸説があるものの、志賀直哉が個人的に創作を進める上で以下のような理由があったからだと言われています。


 まず志賀直哉の健康的な理由があげられます。幼少期から結核の兆候があり、空気の良い場所を求めて転居を繰り返していました。また健康とも関連しますが、志賀直哉は静かで落ち着いた環境で執筆することを好んだようです。


 しかし、ある程度住むと「飽きてきた」と感じ、新しい場所へ移ることも多かったようです。また、志賀直哉の父、直温(なおはる)と確執があり、東京から出た後、頻繁に転居を繰り返した理由のひとつでもあったようです。そうした中で、長編の執筆が途切れ途切れになりがちだったということが言えます。旧居の2階には『暗夜行路』を脱稿した書斎が、今でもそのまま残されています。


 すっかり冬景色に染まった旧居の庭でも、梅やツツジの花芽がすでに膨らみ始めています。また、水仙(すいせん)が、花を咲かし始めています。旧居の庭で1年を通じ繰り返される花々のドラマを見て、訪れる方々は何を心の中に持ち帰られるのでしょうか。この風景が、新たな物語の種となればと思います。

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