◇2024-11-18 (月)
奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、特別講座白樺サロンの会「大正、昭和初期の奈良の美術について」を開催しました。講師は美術史家・愛知県美術館館長の平瀬礼太先生です。
「奈良の美術」と聞けば仏像や壁画など奈良時代の美術をイメージする人が多いようです。確かに奈良に関わる江戸時代以降の近代美術は一般的に思い浮かびません。本日は大正期・昭和初期に活躍した奈良の画家や彫刻家、また奈良の美術動向について解説していただきました。
江戸時代と明治時代を跨いで創作活動をした画家の絵画には、江戸時代以前の古典的な絵画手法の影響が強く残っていることを、明治時代の新聞記事のモノクロ写真に残された作品を見ながら教えていただきました。
明治時代に入ってからの多くの絵画作品については、二科展などの主要な美術作品の展示会で選定され新聞記事などで取り上げられたもの以外は、ほとんど現存していないことを教えていただきました。
その他、奈良に関わる明治時代の彫刻家についても、その作品やエピソードを教えていただきました。細谷而楽のように古美術の修復などにも携わり、彫刻と言いながらお土産物に近い彫像を創作していた作家もいたそうです。この頃は、絵画や彫刻に専念する人が少なく、ほとんどの作家が、学校の師範や教科書、あるいは新聞などの挿絵を書いて過ごしていたようです。
また、志賀直哉とも深い繋がりがあった小説家、武者小路実篤が提唱していた「新しき村」に賛同する美術家や、高畑サロンに集っていた画家、新井完、浜田葆光などの作品についても紹介していただきました。その他、奈良に関わる明治以降の美術関連団体についても教えていただきました。若草山や御蓋山に向かって志賀直哉旧居に至る道を歩くと、画家や文人などの文化人たちの足音が聞こえてきそうです。
ここ高畑サロンでは、志賀直哉と共に近代文化育成を育んできた人々が盛んにクリエイティブな交流を交わしていたようです。