◇2024-10-21 (月)
10月21日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、特別講座白樺サロンの会《飛鳥園小川晴暘とその周辺》を開催しました。講師は奈良県立美術館学芸員の三浦敬任先生です。
姫路市竜野町で生まれ、奈良で仏像写真館「飛鳥園」を立ち上げた小川晴暘の事績や作品の特徴、人となりについてお話しをいただきました。その中で、上京した際に、当時の多くの著名人の肖像写真を請け負っていた丸木写真館での体験が、画家を目指していた小川晴暘が写真に本腰を入れるきっかけとなったそうです。
その後、朝日新聞大阪支社に勤めることとなり、奈良に住まったことで、小川晴暘が仏像写真を撮り始めたきっかけとなったそうです。奈良では頭塔を始め、多くの石仏写真を撮り歩いたようです。また、志賀直哉とも交流があり、『跋』の中で "小川君は(中略)「いいものかも知れないが自分は好かない」とは云わない方だ。(中略)余り自我を出そうとしないのは仕事の性質上いい事だと思っている。"と小川晴暘について評しています。
また、石仏の写真が會津八一の目にとまったことで、飛鳥園を始めるきっかけとなったと教えていただきました。その後、小川晴暘は日本の仏教美術だけではなく中国、朝鮮半島、アジア諸国へも出かけ、精力的に多くの東洋美術を撮影し、出版物として紹介しました。
小川晴暘の写真の特徴は、「ここを見よ!」と写真の中から語りかけるような構成と、自然光を取り入れたコントラストの妙であると言えるそうです。さらには広隆寺の弥勒菩薩像では、輪を作った指の間から、右手側の肩がわずかに見え、そのピント差によって立体感を生み出すような技法も、小川晴暘特有であったそうです。
小川晴暘の背景と被写体との構成やコントラストについては、丸木写真館での肖像写真から学んだ技法であるとお話しをしていただきました。
旧居の庭の片隅に、純白のコスモスが咲いています。通常、写真を撮影すると、特に本日のような晴天の日では、花が風景に埋没してしまいます。そこで、バックに影のある方向から撮影すると、白い花は見事に浮かび上がります。これは今、教えていただいた小川晴暘の技法であるかと思いました。