◇2024-09-30 (月)
9月30日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、奈良学園公開文化講座第72回「志賀直哉と霊性:私の終活」を開催しました。講師は志賀直哉旧居(奈良学園セミナーハウス)館長・奈良学園大学名誉教授の大原荘司先生です。
今回は先生自身の終活の中で得た「方便の世界を生きているにすぎないが、佛智慧に近づくための現象界へのたゆまない適応努力をもって終活とする」という結論を踏まえて、霊性についてお話していただきました。
まずは霊性を語る上で、知性と感性を通して霊性をどう意味付けるかについて、歴史上議論されてきた考え方を振り返りながら検証しました。西欧ではプラトンが提唱してきた霊魂(精神)は知性と霊性から成り立つという理論。さらには「肉体は霊魂の道具である」という考え方は、仏教を始めとする東洋的な見方とは異なることを教えていただきました。また深層意識の存在の意味については、神から与えられた生命であるというキリスト教の広まりの中で理性信仰が進み、長くヨーロッパでは重要視されていなかったそうです。
近年に入り、ヨーロッパでも哲学者ショーペンハウアーや心理学者フロイトらが、深層心理に潜む大きな力について語り、それは普遍的な理論となったようです。また生まれる前から備わっている(知ってる)ことについて本有種子(ほんぬしゅじ)が、人間理解の中で論じられてきたことが紹介されました。
次に志賀直哉が霊性について、どうとらえていたのかについてお話ししていただきました。志賀直哉が自由を大事にし、拘りのない「自在」を生きようとしたのは、武士道から学んだことであるそうです。このことを踏まえ、概念に先回りされる前に霊性をよりどころとした言語化を、執筆を通して実践してきたようです。
本日の講座内容に合致するかのように、セミナールームの窓際には深い赤色のコスモスが生けられていました。コスモスは、輪廻や再生、季節とともに繰り返される自然のサイクルを象徴します。このことから、精神の調和や霊的成長を象徴する深い霊性が含まれていると言われています。