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◇2024-04-22 (月)

4月の志賀直哉旧居

  • 4月の志賀直哉旧居
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 旧居の庭では梅の花に続き、季節の移ろいに本格的に目覚めたように、赤や桃色のツツジ(躑躅)の花が満開を迎えています。

 志賀直哉の作品『赤城にて或日』では、赤城山に咲くツツジが描かれています。その書き出しで「赤城には三種の躑躅があつて」と述べられ、そのツツジについて詳しく語られています。その中でツツジの花を通し、自然の美しさと人々の心情が描かれています。実際に赤城のツツジの盛りの時に、志賀直哉は当時新婚まもなかった婦人と共に、ツツジを見るために鈴ヶ岳へ登ったそうです。

 また、夏目漱石の『こころ』では「躑躅が燃えるように咲き乱れていた」という一節が登場します。尾崎紅葉の『金色夜叉』では 「処々に躑躅の残り、山藤の懸れるが、甚だ興有りと目留まれば」という一節があります。さらに田山花袋の『田舎教師』では「伽羅や松や躑躅や木犀などの点綴された庭がひろげられてあって」という一節が登場します。

 古くは『源氏物語』にも、美しいツツジの花が登場します。ツツジの木は、源氏と鷺の六条院の関係を象徴し、その美しさと儚さが二人の愛の物語をより深く表現しています。また歌の中で、「山越えて遠津の浜の石つつじ、我が来るまでに含みてあり待て」という詩が登場します。この詩は、鷺坂山の白ツツジの花が待っていたかのように愛らしく咲く様子が描かれています。

 ツツジは日本文学において美や季節感を表現する重要な要素となっており、その美しさは今もなお多くの人々に愛されているようです。ツツジは漢字で「躑躅」と表記し、「てきちょく」と読むことができます。「てきちょく」は、「足踏みすること。ためらうこと。進むことをためらったり、一歩進んでは止まったりする様子」を表現するようです。

 さらにツツジの花言葉のひとつに「愛憎分かつ」や「憂愁」といった意味があり、恋愛関係の中での複雑な感情を表現するそうです。こういった少しネガティブな意味合いを持つツツジだからこそ、志賀直哉を始め、多くの作家の創造意欲を掻き立てたのかも知れません。

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