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◇2023-11-20 (月)

11月の志賀直哉旧居

  • 11月の志賀直哉旧居

「今年は色づくのが遅いですね。暑い日が長く続いたからでしょうか」と、旧居を訪れた方からお話がありました。
確かに例年であれば10月も後半になると、旧居の楓も紅葉し始めるのですが、今年は11月の中旬になって、やっと中庭の楓の木から順に色づいてきたようです。

楓の紅葉(こうよう)で葉が色づく様子が、染料を揉み込んで染色する様に似ていることから(もみじ"ぢ")と呼ばれるようになったようです。
ちなみに楓(かえで)という言葉は、葉の切れ込みが蛙の足の指のようなことから、「かえる」が変化して(かえで)と呼ばれるようになったと言われています。

さて「こうよう」という言葉ですが、平安時代以前は「黄葉」と記していたようです。
中国の五行思想では「黄」は「土」を示すもので、日本でも季節の変わり目、つまり秋から冬に移ろう節目であることを楓の色づきを通して表した言葉だそうです。
また「土」という意味合いから亡骸を土中に埋葬することを象徴しているという捉え方もあるようです。


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柿本人麻呂が詠んだ「秋山の 黄葉(もみぢ)を茂み迷ひぬる 妹を求めむ 山道知らずも」は、「亡くなった妻を求めて山に入ったが道がわからなくなった」という意味合いの中に、黄葉(もみぢ)が織り込まれ、冥土に旅立った妻への思いを暗に象徴しています。
そうした視点で言うと、百人一首でもお馴染みで『古今和歌集』に掲載されている猿丸太夫が詠んだ「奥山に 紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき」という歌に込められた切ない悲しさを感じることができます。
確かに楓を「黄葉(もみぢ)」という表記で使った歌には、親しい人との別離を表現するものが多いようです。

近代文学では、多くの著名な作家が紅葉を短歌や小説の中に多く登場させていますが、概してその美しさや壮観な風景への感動を表したものが多いようです。


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11月に入って、先月までの長引いた夏の余韻のような蒸し暑さを伴った日々から、短い秋の涼しさを通り過ぎ、寒さが増すようになってきました。
紅葉の見どころで愛でる「紅葉(もみじ)の帷(とばり)」もまもなく幕を閉じます。

旧居の庭では柿の実がすっかり落ち、それに代わってツワブキ(石蕗)の花がそこかしこで咲き始めています。


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