◇2023-06-19 (月)
本格的な夏日が訪れる前に、旧居の庭は半年に一度、造園の職人さんが来られて、植木の雑枝落としや高い場所に茂る葉の剪定をします。
小枝や掃き集められた葉が、裏庭にある丸く剪定されたツツジ(躑躅)の前に山のように集められていました。
実際に志賀直哉も、庭を大切にしたようで、自らが汗をかきながら木の植え替えや庭石の移動などもやっていたそうです。
植木屋さんと言えば、『和解』、『暗夜行路』などの作品などに登場します。
特に『流行感冒』では、自身が雇った馴染みの植木屋からスペイン風邪を感染するという、植木屋が非常に重要な役柄で登場しています。
6月に入ると雨の日の夕刻頃には、旧居の池で育ったモリアオガエルのオスが「コロロ,コロロ」と鳴き、それに応えるようにメスが「キリリ・キリリ」と鳴き声で愛を交わしている様子が伺えます。
モリアオガエルは日本固有種のカエルで、岩手県の八幡平大場沼と平伏沼では、生息地として国の天然記念物の指定を受けているそうです。
声は聞けども姿を見せないモリアオガエルが、今年はスイレン(睡蓮)の葉の上に姿を見せてくれました。
また池の上で、今年もシオカラトンボが舞い、水面ギリギリの場所に止まり、しばらくしてまた舞い上がる動作を繰り返しています。
おそらく池の様子を見定めながら、卵を産み落とす場所を探しているのでしょう。
水面には、数匹のアメンボが滑走していました。
アメンボのことを関西の一部ではミズスマシと呼んでいるところもあるようですが、正式にはミズスマシは甲虫の別種であり、アメンボはカメムシ目で、飴のような粘液を出すことで「飴棒」から来ているそうです。
庭を散策していると、庭木の隙間をひらひらと縫うように飛ぶアオスジアゲハを見かけました。
まさに旧居の庭は、木々草花もカエルも昆虫も、命が集う楽園になっているようです。
7月8月と、いよいよ暑さが本番となり、旧居の庭の緑も深さを増すことでしょう。
夏を通して庭に吹く爽やかな風は、旧居の廊下を通り過ぎ、旅人の体と心を癒してくれるに違いありません。