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◇2023-06-19 (月)

志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《志賀直哉「ナイルの水の一滴」--西洋的なもの、日本的なもの--》を開催しました

  • 志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《志賀直哉「ナイルの水の一滴」--西洋的なもの、日本的なもの--》を開催しました

 6月19日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、特別講座白樺サロンの会「志賀直哉「ナイルの水の一滴」--西洋的なもの、日本的なもの--」を開催しました。
講師は建築史家で相愛大学名誉教授の呉谷充利先生です。


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 冒頭で先生から、志賀直哉をはじめ、数多くの画家や作家など文化人が、かつてここ奈良に住んでいたのは、西洋文化的なものと日本文化的なものがせめぎ合い両立しようとする地域であったことが理由であったとお話しをいただきました。
実際に建築物で言えば、奈良ホテルや奈良国立博物館は、日本建築の復古的な要素と、西洋的な要素を絶妙に取り入れているそうです。

 次に、日本文化の紹介者として知られているドイツの哲学者、オリゲン・ヘリゲルが、日本的な考え方について、「(日本では)弓は必死で的に当てるのではなく、意識の世界の中で矢を放つことが大切」という、日本特有の視点についての説明の紹介がありました。

 その他、文化における西洋的な価値観と日本的な価値観の融合、もしくはせめぎ合いについて、さまざまな例を挙げて説明していただきました。

 志賀直哉自身は、東京出身者で、学習院で西洋流の教育を受けましたが、奈良に移り住んで、「ロダンの考える人」的な彫像よりも「法隆寺の久世観音」に魅入られ、西洋的なことから日本的な世界観に傾倒したそうです。

 また志賀直哉は、禅の思想を広く伝えようとした鈴木大拙との座談会を通して、大拙から文体も含めた大きな影響を受けたそうです。


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 「人間というものが出来て、何千万年になるか知らないが、(中略)私もその一人として生まれ、今生きているのだが、例えていえば、悠々流れるナイルの水の一滴のようなもので、その一滴は後にも先にもこの私だけで(中略)私は依然として大河の水の一滴に過ぎない」。
これは1969年。志賀直哉が朝日新聞PR版と自著『枇杷の花』に発表した「ナイルの水の一滴」という文章だそうです。

 1971年に他界した志賀直哉の最晩年に書かれた辞世の句とも言われています。
この文章から読み解くことのできる日本的、あるいは東洋的な考え方と、それに対する西洋的な考え方について、教えていただきました。

 ここ志賀直哉旧居も、西洋的な様式を取り入れながらも、日本の伝統が培ってきた技術や様式、世界観などが具現化されています。
さらに、第二次世界大戦後にアメリカ軍の接収なども経て、再び復元し、現在、中庭を臨むサンルームとなっている場所を見渡すと、そのことがよくわかります。


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