◇2023-05-09 (火)
「いずれアヤメ(菖蒲)かカキツバタ(杜若)」。
平安時代末期の武将、源頼政が、12人の美女を目にした時に読んだ句を元に伝わった言葉だと言われています。
「どの女性も優劣つけ難く美しい」という意味です。
アヤメの基部には筋目模様があり、よく似たカキツバタやハナショウブ(花菖蒲)と区別する特徴です。
また美しいという意味を表す「綾」と、女性を表す「女」から、美女の象徴として「綾女」とも表記する場合もあります。
アヤメとショウブも、中国から伝わった時の記述間違いもあり、漢字で「菖蒲」と同じ文字が当てられ、区別をつけ難いようです。
科目的にはアヤメがアヤメ科の植物であるのに対し、ショウブはサトイモ科と言われていましたが、近年のDNAの研究でショウブはショウブ科という単独の種とされています。
そのようなアヤメが、旧居の池の淵に、まさにアヤメ色の花を咲かせています。
ところで、彼の遺品に「銀製菖蒲形箸置」というアヤメを可愛く形取った箸置きが残されていますが、彼がここに住んでいた頃には池の側にアヤメが花を咲かせていたかどうかは不明です。
旧居の池では、ここ数日の暖かい陽光に招かれるかのように、ハス(蓮)の花芽が水面から伸びています。
また真っ白なスイレン(睡蓮)が、水面で夏の到来を告げているようです。
中庭に目を移すと、カキが花を咲かせています。
奈良と言えばカキが思い浮かびます。
旧居の庭にも何本かのカキの木が植えられています。
新葉が茂り始めたカキの木の枝を近づいて見ると、ごく小さな釣鐘の形をした花を咲かせているのを発見します。
すでにガクがあり、雄花と雌花があるのだそうです。
おそらく馴染みのあるカキですが、花を思い浮かぶ人は少ないと思います。
足元には、ニワゼキショウやタツナミソウ、フタリシズカが、ひっそりと咲いています。
夏の花が咲く前に、誰にも気づかれずにいながら、小さな世界で命の息吹を感じさせてくれています。
モミジの葉では、緩む季節の空気の中でアゲハチョウが大きく羽を広げていました。