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◇2022-12-19 (月)

志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《アルベール・カミュの『カリギュラ』、その意味と演出---小栗旬と菅田将暉》を開催しました

  • 志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《アルベール・カミュの『カリギュラ』、その意味と演出---小栗旬と菅田将暉》を開催しました

 奈良学園セミナーハウス志賀直哉旧居特別講座「白樺サロン」の今回のテーマは、「アルベール・カミュの『カリギュラ』、その意味と演出―小栗旬と菅田将暉―」です。講師に関西学院大学教授・東浦弘樹先生をお迎えしました。


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 カミュと言えば、『異邦人』『ペスト』、あるいは『シューシュッポスの神話』などを書き、小説家、哲学者としてノーベル文学賞を受賞した作家として一般に知られています。ところが『カリギュラ』をはじめ『誤解』や『戒厳令』など、数々の舞台作品を残した戯曲作家でもあります。特にカミュは舞台劇に造詣が深く、戯曲の執筆者というだけではなく舞台演出や時には舞台俳優としての活動もしていたそうです。なぜカミュが演劇をするのかについて、「舞台は私が幸福である場所の一つだからだ」と、かつてテレビ番組(1955年)のインタビューの中で語っていたそうです。


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 さて『カリギュラ』は、ローマ時代に実在した人物や実際に起こった事項などを素材にストーリー展開していますが、カミュが史実を描こうとしたわけではないようです。むしろ舞台演出的には「ローマ風のもの以外なら、どんなものでも構わない」と戯曲の但し書きに記すほど、カミュ独自の世界観に基づく人間ドラマを描こうとした作品であると教えていただきました。

 また、今まで世界中で上演された『カリギュラ』の紹介と共に、2011年に蜷川幸雄演出・小栗旬主演で上演された舞台や、2019年に栗山民也演出、菅田将暉主演で上演された舞台を中心に、カミュが描こうとしたカリギュラ像を辿っていきました。カリギュラがなぜ「高度な自殺」と言われるような自滅に至るような態度を示してきたのか、部下エンリコに「月を取って来い」と命じたのはなぜかなど、ストーリーの中に織り込まれた意味についてお話いただきました。


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 カリギュラは、死を目前にした劇の終盤、鏡に映った自分に語りかける場面があります。激しく鏡の中の自己に向き合い語りかけ、やがて滅することを選ぶ様は、水面に映る自分の姿を見て入水したナルキッソスを思い起こします。
 旧居の庭では、ナルキッソスの化身と言われているスイセン(水仙)が、硬い蕾を緩め始め、まもなく開花するようです。

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