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◇2022-12-19 (月)

12月の志賀直哉旧居

  • 12月の志賀直哉旧居

 「昼ごろからサラサラと粉雪が降ってきた。前から我孫子の雪が見たいと言っていたK君が泊りに来ている時でちょうどよかった。自分には雪だと妙に家にじっとしていられない癖があった」と、志賀直哉は我孫子に住まっていた頃に執筆した小説『雪の日』の書き出しでそう綴られています。
その小説の中で、雪景色について「雪の降った細長い沼船が乗り捨ててある。本当に絵のようだ。東洋の勝れた墨絵が実にこの印象を確かに掴み、・・・」と、志賀直哉が言う「普段忘れられている情緒」のひとつとして淡雪の創り出す情景をあげています。
雪景色に限らず、冬の墨絵のような風景は、志賀直哉にとって心惹かれる世界であったのでしょう。
 今、志賀直哉旧居の池に、薄氷が張っています。その上を、枯れて散った落ち葉たちが、北風に舞っています。
 今年は例年に増して寒い冬となりそうで、すでに北陸地方では、記録的な積雪となっているそうです。

 旧居の庭も、すっかり冬景色となり、サルスベリ(百日紅)なども、葉を落とし、枝のシルエットだけが、まさに寒空に太筆で描いた墨絵のように見えます。
 また、先日まで目を楽しませてくれていたツバキの花も、一輪まるごと足元に落ち、色を変えていく様には悲しさを感じざるを得ません。


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 本来は赤い色が際立つ中で、マンリョウ(万両)やナンテン(南天)の稀に見受けられる白い実も、この寒さに似合っています。
庭の壁際には、冷たい風で吹き溜まったカエデ(楓)の枯れ葉が、やがて土に帰る間際のような色彩で寄り添っていました。


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 まもなく年を明けても、厳しい寒さは2月末くらいまで続くことでしょう。
そんな冬の風情を味合うのも、旧居の庭を楽しむひとつです。

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