学校法人奈良学園

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◇2022-08-22 (月)

8月の志賀直哉旧居

  • 8月の志賀直哉旧居

 厳しかった真夏の陽光も、8月後半となって、幾分か柔らかく感じます。旧居の庭で盛んに合唱していたアブラゼミの鳴き声も、今はツクツクボウシの何気に寂しげな鳴き声に代わり、やがて9月に入れば、若草山の方面から木の葉にそよぐ風の音に混じり、ヒグラシが秋の到来を感じさせてくれることでしょう。

 旧居の池のハス(蓮)は今が盛りで、すでに咲き終えた花茎の先の花托は、重い実をいくつも蓄え首を垂れています。それに混じり、今にも開花しそうな濃い桃色の蕾が見受けられました。


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 志賀直哉が庭づくりにこだわっていたのかなと思わせる短編小説の一節があります。
「流行感冒」(はやりかぜ)の中で、志賀直哉は中庭に出て植木屋と一緒に、汗をかきながら、庭づくりをしています。
しかも木を植える場所まで細かく指定しながら、庭づくりに精を出していたようです。
今でも、旧居の周辺は緑が溢れ、自然の風景を満喫するに相応しい場所であると言えますが、志賀直哉は、その豊かな自然環境の延長線に、住まいの庭を置きたかったのだろうということが想像できます。


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 旧居の庭は、池を中心に設計された典型的な日本庭園です。日本庭園は自然環境の模倣として、志賀直哉が自宅の庭に求めたように、池を中心に、自然石や苔むした散策路、山などから移植した草木が配置されます。
一方、西洋の庭園は旧約聖書に記されている言葉、「主なる神は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。主なる神は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ」という記述を基に、エデンの園の再現であるそうです。そういった意味で、概して西洋の庭園には「見るからに好ましい」草花だけではなく、果樹やハーブなど、実用的な植物が植えられている所以であるとも言われています。

 旧居の庭の奥まった所に植えられた茶の木に、丸い緑の実が実っています。
また、渋柿も少しずつ実を膨らませつつあります。庭の植物の移り変わりを通して、季節の移ろいを楽しむ喜びを、志賀直哉も味わっていたことでしょう。


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