◇2022-08-15 (月)
8月15日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、特別講座白樺サロンの会「戦争と美術」を開催しました。
講師は美術史家・愛知県美術館学芸員の平瀬礼太先生です。
本日は77回目の終戦記念日です。
戦争に対する悲惨さや非人道性を今後も永く伝えねばならないことを多くの人が感じているにも関わらず、世界を見渡せば現在も争いや、戦争の危機が存在しています。
戦争がこの世から無くなればいいと願いながら、人類史が始まって以来、今に至るまで、その思いは実現されていません。
その背景に存在し続け、イメージとしてなかなか結びつかない戦争と美術とのかかわりについて、お話をいただきました。
まず、古来より戦争について描かれた絵についてご紹介をいただきました。
古代エジプト(第1王朝)時代に描かれたナルメル王のパレットや、アッカド王朝の大王ナラムシンの戦勝記念碑などに描かれた絵は、勝ち誇った喜びや勝利を讃える思いを表現するものであったようです。
また、アレクサンドロスのモザイク画やその物語を素材とした絵画、トラヤヌス帝記念円柱、コンスタンティヌス帝凱旋門などにも引き継がれているそうです。
さらにこの絵が、その後の戦争画のモチーフとして描かれ続けてきたと教えていただきました。
一方、ヨーロッパ中世以降から近代になると、ゴヤの「戦いの惨禍」のように、戦勝を讃えるだけではなく、その悲惨さを表現する絵画も登場したそうです。
また、近代以降になるとピカソが描いた「ゲルニカ」など、戦争に対する疑問や批判を投げかける作品も多く誕生しました。
ただ、第二次世界大戦の時代には、各国で絵画をプロパガンダの道具として利用した事例も紹介していただきました。
そうしたアートが果たした役割も振り返りながら、今に生きる私たちも、しっかりとアートリテラシーを心得ていく必要があると教えていただきました。
戦争は勝った側の都合で、絵画に限らずどんどん文化が書き変えられていく事実があります。
志賀直哉旧居も、第二次世界大戦後、アメリカ軍に接収され、現在セミナールームとして活用しているこの部屋は、ビリヤードルームとなり、サンルームではGHQの家族や友人グループたちが、パーティーを楽しんでいたのかも知れません。