学校法人奈良学園

ニュース & トピックス
ニュース & トピックスニュース & トピックス

ニュース & トピックスニュース & トピックス

◇2022-07-30 (土)

奈良学園公開文化講座 第53回 女神信仰の深層《アテナとアマテラス》を開催しました

  • 奈良学園公開文化講座 第53回 女神信仰の深層《アテナとアマテラス》を開催しました

7月30日(土)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、奈良学園公開文化講座第53回女神信仰の深層《アテナとアマテラス》を開催しました。講師は奈良学園登美ヶ丘中学校高等学校教諭の上野久美子先生です。

 講義では古代ギリシア文明の女神アテナと、日本神話に登場する女神アマテラスの共通点、そして相違点を探っていきました。アテナの出自や性格には、当時の男性中心的な社会が色濃く反映されています。知恵と戦争の女神でしたが残虐性を嫌悪し、知的な戦いを好みます。父ゼウスの忠実な補佐役としていわゆる「男性的」な振る舞いをする女神とされてきました。

一方で処女神の側面もあり、結婚や恋愛からは距離がおかれました。父ゼウスの頭から生まれている点が特徴です。またアテナからはアテナイ市民の祖となるエリクトニオスが生まれたとされますが、通常の出産を経ることなく、処女母神として描かれています。


20220730_002.jpg


古代ギリシア文明は平等な民主主義社会として理想化されてきましたが、実際には女性をはじめとする非市民への差別を内包した社会でした。そのためか、アテナは「男らしい」性格が強調され、処女かつ市民の擬似的な母という矛盾した属性が与えられています。当時のアテナイ市民の夢想が投影されていると考えられます。

一方でアマテラスにも、アテナと多くの共通点が見いだせます。たとえばアマテラスは、父イザナギから誕生し、弟神スサノオが高天原を訪れた際には武装して戦う姿勢を見せます。またスサノオとの誓約(うけい)によって神を生んでおり、処女母神でもあります。そしてこの時生まれた神の一人から天皇家の祖とされるニニギが誕生したとされました。


20220730_003.jpg


共通点の多い二神ですが、上野先生は「アマテラスの成立には、市民の理想を投影したアテナとは違った経緯が関わっているのではないか」という指摘をされました。古代日本の女性たちは政に参加しており、女性を強く排除するほどの男女格差は見い出せません。また日本書紀や万葉集からは、アマテラスが日の神に仕える巫女だったという解釈ができ、日の神は元々男性神であった可能性があります。女性天皇が君臨した6世紀から8世紀にかけて、権威を持たせるために女性の太陽神アマテラスが必要であったのかもしれません。

二柱の女神を読み解くことで、当時権力の中心にいた人々が抱えていた思惑や精神性に触れことのできる、大変興味深い講義でした。


20220730_004.jpg


庭園には夏の花々が咲いています。背が高く色鮮やかなユリやまっすぐに太陽に向くヒマワリは、女神のような華々しさを振りまいていました。

▲ページトップ

Copyright (C) Naragakuen. All right reserved.