◇2021-09-30 (木)
9月も後半となると、旧居の庭にも、ようやく秋の風が吹き始め、かつて食堂として使われていたセミナールームにも爽やかな空気が通り過ぎるのを感じます。
志賀直哉も、この時期となると、きっと秋の旬を味わいながら、秋風の中に次の物語を描いていたに違いありません。
セミナールームの窓際には、庭の隅に人見知りするかのように咲いている純白のシュウメイギク(秋明菊)が数本、生けられています。
また旧居の庭では、薄桃色のフヨウ(芙蓉)の花が満開です。
蜜を吸っているのでしょうか。花粉を集めているのでしょうか。一匹の蜂がフヨウの花に潜り込んでは飛び、また別の花に潜り込むを繰り返しています。
おそらく蜂は季節の移り変わりを感じ、秋から冬に向けてしっかりと生き延びるための力を蓄えているのでしょうか。
ところで旧居では年末になると吊るし柿の縄が、旧居の2階から何本も垂れ下がります。
旧居の庭では、その吊るし柿にする柿の実が、ようやく黄色く色づき始めています。
志賀直哉の小節「暗夜行路」の中で「秋の夕方のことだった。...(中略)...普段下からばかり見上げていた柿の木が、今は足の下にある」と柿が登場します。
旧居にも立派な柿の木がありますが、志賀直哉が奈良に移り住んでから、おそらく町の中でも柿の木を目にすることが多かったに違いありません。
奈良と言えば柿が名産ですが、藤原宮遺跡から、柿の種子が多量に発見されたり、平城京遺跡から柿の値段を記した木簡が発掘されているそうです。
カシ(樫)の木には、まだ緑色ですが、ドングリがすでにたわわに実っています。
やがて旧居のにもカエデ(楓)が色づき、深い秋が訪れることでしょう。