◇2021-01-28 (木)
立春の待ち遠しい寒の時期ですが、春日山を臨む旧居に向かう道を歩めば、所々に梅の花が見受けられ、確かな季節の移ろいを感じます。
旧居の庭は、まばらに咲くサザンカ(山茶花)の外、まだまだ華やいだ草木を楽しむには、少々待たなければなりません。
スイレン(睡蓮)やハス(蓮)の枯れ枝をきれいに刈り取った池からは、新しい芽が水面から顔を覗かせ、やがて花芽を付けることでしょう。
また、今はクマザサ(熊笹)が生い茂る中庭も、ツツジ(躑躅)を始めとする春の花が咲き誇る日々まで、そう遠くはありません。
志賀直哉も武者小路実篤や尾崎一雄、梅原龍三郎ら、近代日本文学の礎を築いた文人たちと共に、庭の季節の息吹を愛でていたことでしょう。
さて、旧居の、かつては食堂で、現在はセミナールームとして使われている部屋に、庭の花が小さな花瓶に生けてあります。1月はヒイラギ(柊)の葉に、マンリョウ(万両)の赤白の実を添え、訪問者の方やセミナーの受講者に新年の趣を感じていただいています。
さて、暖かさが増すごとに、観光で奈良を訪れる人が少し足を伸ばし旧居に寄られる、ということも多くなるでしょう。
長く文壇の人々を見つめ続けてきた旧居の建物や庭の風景、空気に、ぜひ触れていただきたく思います。