◇2020-11-18 (水)
11月14日(土)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、奈良学園公開文化講座第41回「奈良の魅力とその発見」を開催しました。
講師は奈良学園大学特別客員教授、野口隆先生です。
野口先生は京都大学経済学部を卒業後、数社を経て地域計画シンクタンクへ就職。1983年に株式会社関西総合研究所を創設し、代表取締役 兼 主任研究員として地域や町、村の課題に取り組んでこられました。現在は奈良学園大学の特別客員教授として教育の現場にも立っておられます。
講義の前半では日本が観光立国を目指すに至った戦後の歩みを解説。後半では奈良県独自の課題を踏まえた上で、これまでの成功事例についてご紹介いただきました。
まずは戦後の地域づくりの歴史を振り返りました。鍵となるのは、戦後高度成長期の急速な工業化です。人々の生活様式が変化し、人口が一部の大都市、特に東京に集中するようになりました。
この不均衡を解消するため地方で行われてきたのが、大企業の工場誘致や国主導のリゾート計画でした。しかしその施策にも限界が見えてきた中、地方主体の地域づくり、とりわけ観光分野の発展が重要視されるようになってきたのです。
しかし観光の意義は、単に国の名所や名物を楽しんでもらうことだけにとどまりません。
野口先生は「人々の交流のきっかけや交流そのものを生みし、相互理解を深めて、戦争しない世界のベースをつくることが、観光の意義です」とお話されていました。
また、歴史や文化、自然資源について広く人々に知らしめてくれる効果もあります。
この数十年で観光のトレンドは変化し、団体・ツアー・観光型のマスツーリズムから、地域づくりの視点を取り入れた個人~グループ・体験・もてなし型のミニツーリズムが主流になってきました。
趣味性やテーマ性も重視されています。
そんな中、奈良県は豊富な観光資源に恵まれているにもかかわらず、のべ宿泊客数が全国46位と少ない点も課題です。
講義の後半では、奈良県内で行われている地域づくりの取り組みについて、観光客と地元住民のあたたかな交流を生み出した高取町「町家の雛めぐり」、地元出身者の里帰りや留学生のホームステイ、大学ゼミなど幅広く取り組んでいる宝生深野、大和野菜の魅力に光を当てた「農家レストラン 清澄の里 粟」のほか、天川村洞川温泉など、数多く紹介していただきました。
受講者からは観光都市としての京都と奈良の違いなど、興味深い意見があがっていました。
庭では小道脇のツワブキが見頃を迎えています。樹々は紅葉したり落葉したりと冬本番への準備を始めていますが、常緑のツワブキはつややかな緑と鮮やかな黄色のコントラストが見事です。