◇2019-11-27 (水)
11月25日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、公開文化講座「宋書倭国伝から古墳時代を再現する」を開催しました。講師は鹿児島国際大学客員教授、奈良教育大学名誉教授の三辻利一先生です。
三辻先生は、従来の考古学研究で土器の年代測定を、形状などの特性から推定するだけではなく、元素分析を通じて土器を形成する土の素性、特にそこに含まれる長石の特性を分析することの重要性を説かれています。
それによって、土器が作られた場所や年代、さらには姻戚関係に至るまでの確定精度が飛躍的にアップするのだそうです。
つまり、年代測定としての縦軸だけではなく、地域性や関係性など、横軸の広がりも明らかになるということです。
そうした視点から、3世紀後半から7世紀末までに作られた規模が異なる前方後円墳の移り変わりと、それに基づいて読み解く時代背景についてのお話をしていただきました。
例えば、時代と共に台頭したり弱体化する豪族や、大和政権が現在の天理付近から北上していくプロセスなどが明らかになります。
また、そうした歴史的変化は、『宋書倭国伝』など、客観的に書かれた文書などからも、検証することができるそうです。
今後、三辻先生が提唱されている、科学的分析による歴史検証のエビデンスを増やすことにより、今まで不明だった歴史の空白を埋めることができるようになるかも知れません。
志賀直哉旧居の中庭には、さまざまな色合いの小菊の花が咲いています。菊は古来から日本固有の花と思われがちですが、実は飛鳥時代や奈良時代にはまだありませんでした。
万葉集には菊の花は登場しません。大陸から菊が渡ってきたのは平安時代と言われ、鎌倉時代に、後鳥羽上皇がことのほか菊を好まれたことから、皇室の御紋として定着したそうです。