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◇2019-09-30 (月)

奈良学園公開文化講座第33回「志賀直哉の唯名論」を開催

  • 奈良学園公開文化講座第33回「志賀直哉の唯名論」を開催

9月30日(土)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、奈良学園公開文化講座第33回「志賀直哉の唯名論」を開催しました。


講師は志賀直哉旧居(奈良学園セミナーハウス)館長・奈良学園大学名誉教授の大原荘司先生です。


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まず、日本ではあまり使われていない「唯名論」についての説明がありました。
また、志賀直哉は極めて唯名論的作家であることが紹介されました。志賀直哉の作品の中では、「なぜならば」や「故に」といった、概念を組み立てていく論証的表現はほとんど見当たらず、それに代わって「とにかく」という表現が頻繁に使われています。また「本当」という言葉を「本統」と意識的に表記するところにも、その特徴が表れているようです。


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論証を論理的な文脈で書いていくのではなく、原始的観察眼とも言える事象のとらえ方で書き綴る文体については、当時は作家や評論家から酷評も受けたようです。
これについては、志賀直哉自身が、自由で人間の赤心(偽りのない、ありのままの心)を以って小説を書くことが肝要であると述べています。
『暗夜行路』などの作品の中に描かれた一瞬の情景の描写などから、唯名的な表現が見受けられるようです。
志賀直哉は作品を通して、自分自身の心を徹底的に掘り下げ続けた作家であったと言えるとのことでした。


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唯名論に対し実在論は、特に理念や概念を空想の中で組み上げる、アメリカ映画が描く世界観についての特性と比較で説明をしていただきました。
また、唯名論的とらえ方と、仏教的な世界観との関連性についてもお話をいただきました。
我々の日常生活を振り返ってみると、前提や概念にこだわって思考するところが多く実在論的であり、その傾向は教育の中でも言えるようです。


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旧居の中庭では、ピンクのフヨウ(芙蓉)の花が真っ盛りです。その華やかな花と寄り添うようなキンモクセイ(金木犀)からは、芳しく甘い香りが漂っています。
「花弁」という実存論的な美しさと、「香り」という、形態は無いが、その一瞬を華やかな空気で満たす唯名論的な美しさの重なり合いを感じる時、本日のお話を象徴しているかのようです。


次回の文化講座は、10月21日(月)開催予定です。→《2019年度奈良学園公開文化講座案内》

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