◇2018-11-19 (月)
11月17日(土)、奈良市高畑町にある奈良学園セミナーハウス志賀直哉旧居において、第26回目の奈良学園公開文化講座を開催しました。
今回は、奈良学園大学人間教育学部の桑原祐子教授を講師に、「正倉院文書を読み解く」という題で講義を行いました。
奈良国立博物館で11月12日まで「第70回正倉院展」が開催されていましたが、その中から1300年前に生きた人々の生活を垣間見ることができる文書をとりあげ、読み解きました。
まずは当時に書かれた「月借銭解」、写経を専門に行う写経所の職員、経師等が、借金を申請するために提出した借用証書が紹介されました。こちらには金額や期日、利息、連帯保証人等が明記されており、さらに返済記録が記されています。
現存する休暇届けなどと照合することで、1300年も昔の借用者の生活事情や当時の職員の立場などが如実にわかることが紹介されました。
また、正倉院に伝わる代表的な天平美術品「鳥毛立女屏風(トリゲリュウジョノビョウブ)」の下貼りにも、文書が書かれた書類がリサイクルされて使われていたそうです。
当時は、紙が貴重なため、表裏が文章に使われた後、さまざまな用途に再利用されたようです。
また、リサイクル利用された書類の中から、新羅などの外国で作成された文章が発見され、そこから、日本と朝鮮半島との交易の様子なども伺われます。
最後に受講者からの「平仮名のなかった当時の文章は漢文表記なのか」という質問に対し、先生から「一般に日常で使われている文章は、正しい漢文で記述されているのではなく、日本語で話す順番で漢字が並べられているようです。日本語が未だに書き言葉と話し言葉が異なっている要因は、この頃からあったのですね」とお話をいただきました。
旧居の庭には、赤と白のサザンカが咲いています。サザンカは茶花として使われることが多く、それが「山茶花」の文字の由来であると思いがちです。しかし実際は中国ではかつてサザンカの葉をお茶として使われていたそうで、それが「茶」の文字が当てられた所以と言われています。今日のお話のように、言葉を探っていくことで、当時の日常の様子が垣間見れます。