◇2018-10-16 (火)
10月15日、学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居において「白樺サロンの会(今期第6回目)」が、講師に奈良県立美術館主任学芸員の飯島礼子先生をお招きし、「絵本に見る表現の多様性~〈ブラティスラヴァ世界絵本原画展〉から~」をテーマに行われました。
講座を始めるにあたって、まずブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)について説明がありました。スロバキアの首都名が名づけられたこの原画展は、地域の歴史的な背景を踏まえて、政治的対立や民族的対立を超えて子どもたちのための本を展示し、国際的交流の場をつくる目的で、1967年から開催するようになったと言われているそうです。
昨年度(2017年)には、世界49カ国から373組が参加、日本からも15作家が出品しています。
次に絵本を見る楽しみについてお話しをいただきました。
まず絵のストーリー展開で、時間の流れや空間の移動を感じることができること。客観的な視点や主観的な一人称の視点など、絵を通して、さまざまな視点軸に立ってページを見ることができること。見開きごとに世界観がつくられ、それがページをめくる度に場面が変化すること。また本の綴じの方向で、物語の流れを追っていけることなど、絵本を楽しむための要素について教えていただきました。
例えばその具体的な例として、客観的な視点から俯瞰的に描かれたアンナ・デスニツカヤの「懐かしのロシアの家」や、一人称的な視点で展開する、こしだミカの「でんきのビリビリ」が紹介されました。
一方、綴じの方向によって、展開が変わる例として、ヴァリ・ミンツィの「ガリラヤ湖の小さなクジラ」が紹介されました。
また、絵の具だけではなく、アルミ板を使用したり、透明アクリル板の表裏を使ったり、最近ではさまざまな技法が使われている例について話していただきました。
特に最近では、デジタルと直筆の融合や、デジタルだけで描画する作品も多くなってきているそうです。
最後に、絵本を立体にすることで、新しい絵本の鑑賞方法を提唱した、キム・ジミンの「ハイドと私」が紹介され、彼の発言を元に、今後の絵本のあり方についてのお話しがありました。