◇2017-11-20 (月)
奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居では、毎月1回、特別講座「白樺サロン」を開催しています。今期第7回目は、相愛大学名誉教授・橋元淳一郎先生を講師にお迎えし、「宇宙と生命の謎を追う-数式なしのやさしいサイエンス」と題した講義を行っていただきました。
「私たちの身体のような『物質』が何故存在するのかは、紀元前の仏教哲学に見られるように『唯識論』で近年は考えられるようになってきています」という解説から講座は始まりました。「真に存在するものは何か」という問いは哲学的なものですが、多くの物理学者は、そうした考えに則りながら試行錯誤を重ねて、宇宙の誕生について研究を続けています。
橋元先生は、本題に入る前に、まず物理学の基本になっているクオークなどの『4つの素粒子』と、重量などの『4つの力』について分かりやすく解説。その途中では、現在、最も新しい考え方と言われている「標準理論」にも触れ、今も世界中の物理学者が、問いに挑戦し続けていることにも言及されました。
続いて、本題の『宇宙の誕生』についての講義が行われました。講義では、最初に宇宙に誕生したのは水素やヘリウムなどの『軽い』原子だけだったことを説明。そして、誕生した時に非常に高温だった宇宙が、膨張していくうちに冷えて行き、その過程で『4つの力』の中で最も弱かった重力の作用によってだんだんと集まり凝縮され、それまで電子的に反発しあっていた分子と分子が結合して鉄などの重い原資を誕生させることになったこと。そして、鉄以上に重い原子は超新星の爆発によって誕生したことを説明されました。
『星の誕生と原子核の構成』や『分子の形成』によって生み出された水の大切さなどを解説された後、最終的には、私たちが存在するために必要な原子の中のいくつかは、超新星が生み出したものであることに触れられました。解説で言われた先生の「私たちの中には宇宙が存在するのです」という言葉がとても印象的でした。
「白樺サロン」では、文学に関する講義が行われることが多いのですが、今回は「物理学」をテーマに選びました。普段とは異なる学問に触れることで、私たちの存在や宇宙について考える貴重な機会となりました。
旧居の中庭の紅葉は、その名の通りに真っ赤に葉を染めて、本当にきれいでした。常緑樹の緑の葉との美しいコントラストに、思わずシャッターを切りました。