◇2017-06-19 (月)
学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居において、特別講座「白樺サロンの会」を開催しました。今年度第2回目となる今回のテーマは、『文学に見る東西...志賀直哉と谷崎潤一郎の関西移住...』。講師は、建築史家の呉谷充利先生です。
千葉県の我孫子から京都を経由し、奈良に移り住んだ志賀直哉。一方、関東大震災を機に箱根から神戸に移り住んだ谷崎潤一郎。上方への移住の動機は両者、異なりはしましたが、関東の文化の中で生きてきた二人の作家が出会った異質な空気は、その後の作家活動に多大な影響を与えたそうです。当講座では、両者の作風を通して関東の「粋(いき)」と関西の「粋(すい)」との概念の違いについて考察し、背景にある文化的特性について学びました。
講座では「粋(いき)」と「粋(すい)」を論ずるにあたり、この論議に不可欠なもう一人の著名な作家、夏目漱石の作風についていくつかの作品が紹介されました。夏目漱石は関東で終生活躍した作家で、作品の中には当時の「粋(いき)」な言葉遣いや生き様が表現されています。
そうした文学における表現を見ると、「粋(いき)」と「粋(すい)」は、同じ文字で表記されていますが、似て異なるものであると言えることが理解できました。基本的に関東における「粋(いき)」は、心意気などの武士道精神に基づくものであり、関西における「粋(すい)」は奥深さや余計なものを削り取った真髄を表すものであると、その概念の違いについて、わかりやすく教えていただきました。
旧居の庭の楓も夏の深まりを前にますます緑の色を濃くし、やがて蝉の声を待つばかりとなりました。
次回、第3回の白樺講座<7月17日(月・祝)>は、通常とは違い午後2時から『日本洋画の揺籃期から...西日本を中心に』をテーマに開講いたします。