◇2016-10-18 (火)
本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で、本学教員による「奈良学園公開文化講座」を開催しました。
第5回目の今回は、正倉院文書の国語学的研究を専門とする奈良学園大学人間教育学部教授の桑原祐子先生が、「正倉院文書と古代の役人」と題して講義を実施。
今月22日(土)から開催される第68回正倉院展に合わせ、出展が予想される正倉院古文書・正集五 第1紙〜8紙を取り上げ、その内容を読み解きました。
正倉院の中倉には造東大寺関係品が多く収められており、造東大寺所の下に置かれた写経所の役人の文書も遺っています。桑原先生はこれらの文書を取り上げ、天平宝字5年(761)頃の近江・石山寺の増築をめぐって、造石山寺所や管轄する造東大寺所とのやりとりを解説。役人が現場の窮状を訴え、米や銭の支給を取り付ける様子を読み解きました。桑原先生は、律令制は言葉で人を動かす文書主義であったとし、こうした文書を駆使する当時の役人の奮闘ぶりが窺われました。
また番外篇として写経所の経師が待遇改善を要求する草稿も紹介。3日に1度の飲酒や月に5日の休暇などを求める内容に、参加者の方も古代の役人を身近に感じていた様子でした。
わかりやすい桑原先生の講義に熱心に聞き入っていた参加者の方々。講義後もさまざまな質問が飛び交い、正倉院宝物への興味の深さが窺われました。
旧居の庭で採れた柿が今年も干し柿に。2階の書斎では窓いっぱいに吊るされた干し柿が、穏やかな秋の日差しを浴びていました。
志賀直哉旧居HP http://www.naragakuen.jp/sgnoy/