学校法人奈良学園

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◇2016-03-31 (木)

◆平成28年度白樺サロンの会特別講座日程

  • ◆平成28年度白樺サロンの会特別講座日程

 学校法人奈良学園は、セミナーハウス志賀直哉旧居において、白樺サロンの会による特別講座を広く一般に公開し、開催いたします。

1.「志賀直哉旧居」について
 志賀直哉旧居は、文豪志賀直哉が自ら設計し、家族とともに9年間(昭和4年から昭和13年)を過ごした、数寄屋造りに洋風の意匠を凝らした和洋折衷の邸宅です。当時、志賀直哉を慕って多くの小説家や芸術家が、風光明媚な高畑(たかばたけ)にあるこの家を訪れ、語り合ったところから、いわゆる「高畑サロン」として知られていました。

 学校法人奈良学園は、このような文化的に貴重な建築物を末永く保存するとともに、教育・研究の場とするため、国の保養施設として利用されていた旧居を昭和53年に譲り受け、2度にわたる復元工事を行い、学園のセミナーハウスとして活用しながら、一般にも公開しています。

 このようなことから、平成12年12月4日に国の有形登録文化財、平成28年2月5日には奈良県の指定有形文化財(建造物)に指定されています。

2.「白樺サロンの会」について
 志賀直哉旧居のある高畑周辺の景観や文化の愛好者で構成されている有志のサークルで、「高畑界隈に残された遺産の継承とその文化の発展を図ることを目的」とする会です。

3.「特別講座」について
 奈良学園は、志賀直哉旧居を学園のセミナーハウスとして活用する一方、地域貢献の観点から、一般の方々に対しても「高畑サロン」にちなみ、文化と知の発信の場であることに努めてきました。平成19年に白樺サロンの会が発足してから10年目、復元工事を経て平成22年から会のメンバーが講師となって講座を始め7年目を迎えます。志賀直哉という日本を代表する小説家が多くの芸術家と育んだ文化の香りがいまだにそこはかとなく感じられる旧居。講座はその中でも、南隣のサンルームから流れ込む柔らかな光を受けて落ち着いた独特の雰囲気を醸し出す、当時食堂として使われていたモダンな部屋で行われます。

 志賀直哉と高畑をこよなく愛する「白樺サロンの会」の講師陣により、過去・現在・未来に通じる様々な問題(文学・美術・物理学)を専門的かつ分かり易く語る本講座にぜひお越しください。


※定員に達しましたので、受講申し込みは終了しました。
  ①開催日:5月~12月各月の第三月曜日(一部変更)
  ②時間帯:午前10時30分~12時00分(一部 午後2時00分~3時30分)
  ③受講料:2,000円 / 全8回分(1回ずつ参加の受講料は350円)
   ※受講料は、初回講座参加時に申し受けます。
  ④受講者数:先着順35名 (※受講申し込みは終了しました)
  ⑤申し込み / 問い合わせ先:学校法人奈良学園セミナーハウス志賀直哉旧居
  ⑥電話 / FAX:0742-26-6490

             
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平成28年度志賀直哉旧居特別講座(「白樺サロンの会」)
--移ろう情景と内なる世界--

 四季の変化、旅の風景あるいは自然の大きな力さらにまた悠久の時の流れに眼前の風景は移ろい、その情景を変えてゆきます。その情景と向き合って、われわれは時にとまどい、また自らを省み、あるいは究極に無常や諦念を学びます。本講座ではわれわれを取り巻く情景とその変化や移ろいに伴う内面的なこころの世界について、改めて今日の視点を交えながら考えてみたいと思います。

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1. 5月16日(月) 時間 午前10時30分〜12時00分
志賀直哉と奈良―「暗夜行路」完成に向かって―
講師:奈良女子大学名誉教授 弦巻克二
 氏

 極論すれば、志賀直哉の関西在住時代には「暗夜行路」の「後篇(第四)」以後の課題―妻の過失とそれからの大山での解脱まで―が潜在し続けている。それがどのように作者に納得して書けたのかを、当時の作品(「雨蛙」「山科の記憶」「座右寶」)や事柄などを通して考えてみます。

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2. 6月20日(月) 時間 午前10時30分〜12時00分
小出楢重・谷崎潤一郎と志賀直哉 --表現における性分(神経)と心持ち--
講師:相愛大学教授 呉谷充利
 氏

 谷崎潤一郎と志賀直哉の文学作品を小出楢重の絵画論を交えてお話ししたく思います。谷崎は、あたかも「手のひらの中に、この山間の霊気と日光とが凝り固まった」かのような「一踝の露の玉」たる吉野の「ずくし(熟柿)」の美を愛で、志賀は無限の「大きな自然の中に溶込んで行く」精神と肉体の「陶酔感」を大山の夜空の静寂に見ます。いわゆる精神と肉体の問題を谷崎の「刺青」と志賀の「暗夜行路」において考えてみます。

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3. 7月18日(月・祝) 時間 午前10時30分〜12時00分
志賀直哉『暗夜行路』を読む --底なしの不安から東亜の美へ--
講師:相愛大学教授 呉谷充利
 氏

 志賀直哉が『暗夜行路』に書く「底なしの不安焦慮」は科学にたいする重要な問題を孕みます。この文学者の目は深く文明の問題を見据えています。関西に居を構え、ロダンの彫刻から救世観音像へとかれの美意識は変わり、深く東亜の美になぐさめられます。この見方において、私は文学者に科学を、科学者に文学を見ながら、東亜の美が意味する文明の問題を今日的な視点から改めて取り上げてみたいと思います。

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4. 8月29日(月) 時間 午前10時30分〜12時00分
震災後に読む --アルベール・カミュの『ペスト』--
講師:関西学院大学教授 東浦弘樹
 氏

 二十世紀フランスの作家アルベール・カミュの小説『ペスト』(1947)はアルジェリア第二の都市オランにペストが流行し町が閉鎖されるというストーリーですが、第二次大戦中のナチスドイツによるフランス占領とそれに対するレジスタンスの寓話でもあります。しかし、『ペスト』は人間が天災とどのように戦うべきか、天災との戦いに何が見出されるかという問題に貴重な示唆を与えてくれる物語でもあります。それだけに、東日本大震災の後、多くの作家、知識人が『ペスト』を「いま日本人が読むべき本」として挙げました。そういう視点からこの作品を読んでみたいと思います。

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5. 9月19日(月・祝) 時間 午後2時00分〜3時30分
こいつが敵だ! 冒涜のイメージ
講師:美術史家 平瀬礼太
 氏

 崇敬の像は裏返してみれば崇敬させるということを暗に示しています。歴史は勝者の英雄によって切り開かれてきました。が、勝者は敗者と裏腹です。敗者はこの勝者の像を引き倒すことによって新たな自身の正統性を高らかにうたいます。もっとも確かのものがもっとも危ういものになる、この人間のもっともドラマティクな出来事に迫って、作られた歴史からさらに深く真の歴史といい得るものに触れ、人間の実相に辿り着きたいと思います。

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6. 10月31日(月) 時間 午前10時30分〜12時00分
「禅(ZEN)関連企画展 雪舟・世阿弥・珠光... 中世の美と伝統の広がり(仮称)」
講師:奈良県立美術館学芸係長 稲畑ルミ子
 氏

 奈良県立美術館が10月15日から11月27日まで開催予定の秋季企画展では、禅との関わりの中で中世に形成され、奈良ともゆかりが深い水墨画・能・茶の湯を取り上げ、その美の世界と、現代まで脈々と続く伝統の広がりを展示します。この展覧会を十分に楽しんでいただくため、展示のねらいと見どころについてお話しします。

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7. 11月21日(月) 時間 午後2時00分〜3時30分 →☆(変更)午前10時30分〜12時00分
物理学で見る宇宙の神秘--実在とは何か--
講師:山口大学客員教授 / 相愛大学名誉教授 橋元淳一郎
 氏

 この世界において、幻想ではなく真に存在するものは何かという問いは、本来哲学の課題です。物理学が明らかにするものは、科学的客観的な事実であり、それは哲学的な実在 とは異なったものかも知れません。しかし、ニュートン以降、この 400 年間に物理学が明らかにしてきた事柄は、驚異としか言いようがありません。それは哲学的な実在を問う時 に決して無視できない重みを持つでしょう。本講座では、最新の物理学が明らかにした宇 宙の神秘を、数式なしで、できるだけ易しく解説します。

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8. 12月19日(月) 午前10時30分〜12時00分
夏目漱石『こゝろ』―「先生」の遺書が伝えるもの―
講師:奈良女子大学専任講師 吉川仁子
 氏

 漱石の『こゝろ』は、教科書にも採録され、多く読まれていますが、わかりにくい部分も多い作品です。研究では様々な観点からの読み直しが進み、教科書で習った『こゝろ』とはずいぶん違う解釈もあります。そのような研究動向にも少し触れつつ、「先生」の遺書は何を伝えようとするものなのか考えてみたいと思います。また、志賀直哉は『こゝろ』の後に朝日新聞に連載する予定でしたが、『こゝろ』も終盤になって急に辞退し、漱石を困惑させました。ある意味志賀と縁の深い作品である『こゝろ』を、志賀旧居で一緒に読んでみましょう。

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