学校法人奈良学園

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◇2015-12-21 (月)

白樺サロン特別講座・夏目漱石「彼岸過迄」を開催しました

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今年度最後となる白樺サロン講座では、奈良女子大学専任講師吉川仁子先生をお迎えし、夏目漱石「彼岸過迄」と題したご講演をいただきました。「彼岸過迄」は、明治45年に朝日新聞で連載された作品で、漱石後期3部作の1作目です。この作品で漱石は短編を集めて長編を構成するという手法を試みています。しかし全体として統一性を欠く「失敗作」との評価がある中、今回は統一性を見出す可能性を探りました。

吉川先生はまず7章からなるあらすじを紹介し、主な登場人物である、須永市蔵、千代子、松本、敬太郎の人物像について解説しながら、漱石が作品に込めた意図を紐解いていきました。登場人物がはらむ矛盾や作品中に多く使われている対比表現を取り上げ、これらが単なるレトリックではなく、ダブル・バインド、あるいは矛盾と見える表現で語られるほかないのが現実であることを示しました。

また重要な意味を持つ「雨の降る日」の章では、漱石の五女・ひな子の急死や自身が生死をさまよった経験が投影されていることも指摘。「彼岸過迄」というタイトルの意味にも触れました。さらにこの章で漱石が提示している「不思議」について解説。子どもの死という非合理なものを通して人智の及ばない現実を表し、そうしたものへの畏れが須永の意識に描かれていることにも意味があると指摘しました。

最後に須永の引き立て役と思われがちな敬太郎の位置づけについても言及。須永と対比させて自我に固執しないで行動する姿を描き、「雨の降る日」の章に示されるなぞかけに対する答も、敬太郎を介して表していると語りました。

吉川先生の丁寧な解説と詳しい資料により、参加者の皆さんも「彼岸過迄」という作品を深く掘り下げて鑑賞。背景にある漱石が経験した娘の死や苦悩にも心を寄せている様子でした。

今年も残すところあとわずか。裏庭はすっかり冬枯れの景色ですが、中庭では山茶花が、たくさんの花をつけていました。

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