学校法人奈良学園

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◇2015-06-16 (火)

白樺サロンの会第2回 奈良女子大学弦巻克二名誉教授「志賀直哉と池田小菊」の講義を行いました

  • 白樺サロンの会第2回 奈良女子大学弦巻克二名誉教授「志賀直哉と池田小菊」の講義を行いました
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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で、前期特別講座「白樺サロン」を開催しました。この講座は旧居界隈の文学や芸術に残る貴重な遺産を継承するために発会した"白樺サロン"の会員を講師に迎えて行われるものです。第2回目となる本日は、奈良女子大学の弦巻克二名誉教授による「志賀直哉と池田小菊」と題した講義が行われました。

池田小菊は教育者から志賀直哉に師事して小説家になった人物です。和歌山県で小学校教諭を務めていた時、自分自身を表現する"綴り方教育"の重要性を自覚。29歳の時(大正10)に奈良女子高等師範(現奈良女子大)付属小学校へ赴任すると、生徒の個人尊重・自学自習の精神に基づく創造的学習法「合科学習」を実践していきました。

志賀直哉と出合った小菊は、彼に亡き父の面影を重ね、志賀家の家庭教師を志願。昭和3年に教師を退職すると志賀の門下に入り、本格的に小説に取り組むようになります。昭和11年には小林秀雄の推薦で「鳩」を発表、昭和13年に志賀直哉との交流を描いた「奈良」は芥川賞候補にもなっています。

自由教育的発想で総合学習を進めた小菊ですが、先生は、師である志賀直哉も社会制約や封建的な考えにとらわれない自由な考えの持ち主であったと指摘されました。先生のご専門である泉鏡花は、師・尾崎紅葉に絶対服従だったそうですが、志賀は弟子とも対等で自由な関係を築いたそうです。小菊は時に尊敬する師の作品を批判することもあり、志賀もこれを許していたのは、師弟の関係を超えて個の意見を尊重していたからだと考察されました。「自主性や主体性は一方でエゴにもつながる。"自分らしさ" とは我を捨てた無の境地から生まれるのかもしれない」と、人間が主体的に生きることの難しさについても付け加えられました。

先生は、志賀の自由な思想や人間性について、プロレタリア作家の小林多喜二との交流にも触れました。多喜二は志賀に私淑しており、彼が亡くなった時には志賀も多喜二の母に悔やみの手紙を送っていたそうです。志賀が主義・主張にこだわらず、人民解放のために信念を貫いた小林の生き様を正当に評価していたことも示されました。

自己の探求を"綴り方教育"に求め、これが結果的に志賀直哉に師事することにつながり、奈良で小説家へと転身していった池田小菊。やがて婦人会活動に担ぎ出されてしまう女性作家の数奇な運命に、参加した皆さんからも関心が寄せられました。

梅雨もひと休み、初夏の陽射しに包まれた旧居の庭ではひっそりと睡蓮が花を咲かせ、池の畔ではモリアオガエルの卵塊も見られました。

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