学校法人奈良学園

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◇2014-12-22 (月)

近代文学後期講座第3回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で近代文学後期講座「文学表現の諸相<詩歌と小説の相関>」(全5回)の第3回「斉藤茂吉と釈迢空(折口信夫)」を開催しました。講師は京都大学以文会会員の植村正純先生です。

まずは、前回読んだ折口作品『口ぶえ』の抄の内容を振り返り、折口の文学観を考察しました。本作品は彼の少年時代を彷彿(ほうふつ)させる自伝的小説であるということですが、主人公の漆間安良少年が祖父の故郷・飛鳥の神社を親に内緒で訪ねるくだりは、まさに折口の祖父が飛鳥坐神社の宮司であった事実そのものです。

また漆間少年の旧制中学時代には、岡沢という雄々しく荒くれたスポーツマンの先輩と、清らかで知的な深みのある渥美という同級生がおり、その渥美少年とは同性愛である内容が記されています。

先生は、折口の恋愛形態や、彼の家系図から見える生い立ちの微妙さに触れ、彼の作品は、『死者の書』の聖なる俤人と恐ろしき死者、『口ぶえ』の中の乱暴で猛々しい者と清らかで知的な者というように相反する性格の人物(対象・世界)に惹かれ影響されていくが、最終的には聖なる美しいものに統合・浄化されていっていると話されました。

続いて、「藤無染と釋迢空」というテーマでも考察されました。年譜を示し、折口が国学院大学入学のために上京して10歳年上の藤無染と同居し、いろいろな面で彼に惹かれ敬慕、新仏教に傾倒していき、人生観、学問や創作世界に大きく影響を受けたと説明されました。そして、折口が国学院卒業後まもなく使い始めた「釋迢空」という筆名も藤無染が付けたものだと話されました。

さらに、歌人・釋迢空(折口信夫)と、斉藤茂吉の短歌を読み比べました。先生は、二人の作品中、<母を詠む>ものとして、釋迢空の「霜」「母」(『海やまのあひだ』)、『短歌拾遺』、「親を憶ふ」(『倭をぐな』)、茂吉の「死にたまふ母」(『赤光』)、「雑歌」(『あらたま』)を挙げ、それらを音読しながら説明を加えていかれました。

二人は共にアララギ派の歌人でしたが、その共通点とそれぞれが追及し描こうとした世界について、また、釋迢空の歌には句読点が付いていることについても、次回に考証を進めていきます。

旧居の庭では、水仙、万両や千両などの冬花が庭に彩りを見せる一方で、早くも馬酔木の花が一輪、二輪と開花し始めました。

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