学校法人奈良学園

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◇2014-10-27 (月)

平成26年度 近代文学後期講座第1回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で近代文学後期講座「文学表現の諸相<詩歌と小説の相関>」(全5回)の第1回「志賀直哉の文学表現 ―創作のモティーフと表現―」を開催しました。講師は京都大学以文会会員の植村正純先生です。

先生は「作品は十人十色。それぞれの人生の表白ですが、それらの作品を読むとき、<読者は(自分の生活体験や知識を総動員して)自己を読む>のです」と話して、本講座で取り上げる4人の作家に関して簡単な説明をされました。

そして、「志賀直哉は昭和4年から13年までの9年間をこの旧居で過ごしました。彼の生涯の実生活や作家活動の中でも大きな<実りと調和>を得ることのできた、特筆すべき期間でした」と前置きして、解説に入られました。

先生は「直哉の作品の極めて明快・簡潔な文学表現が、他の作家の作品を見るときの<ものさし>となります。すなわち、<即物的リアリズム>と<表現の冴え―対象把握の鋭敏―>であり、それが<小説の神様>と称された所以(ゆえん)です」と話されました。

続いて、直哉の年表の要所を追いながら、大正元年(直哉29歳)に発表した『大津順吉』『クローディアスの日記』を中心に創作のモチーフと表現を探っていきました。直哉がお手伝いさんとの恋愛問題で父親と争い、尾道に移り住んだときの作品です。

<気分・不機嫌・不快・不愉快・気持ち>などの言葉が頻出し、気分の激しい高揚が随所に見られ、先生は「フィクションではありますが、まさに直哉の実生活そのものです。父親に対する怒り、一方で祖母に対するいつくしみが『大津順吉』を生み出すエネルギーとなったのでしょう」と考察されました。

『クローディアスの日記』は、『ハムレット』やシェイクスピアにまで反感を覚えた直哉が、その登場人物である憎き敵のクローディアスに寄り添って書かれています。直哉はここでもクローディアスの<不安や不快、苦悩>を描いています。

「この旧居での期間は、直哉の小説家としての人生を二分した時期です。前半は、強い心の表白作品が多いですが、父親とも和解した後半はそのような創作モチーフがなくなり、ほのぼのとした作品になっています」と、直哉の人生や心情の変遷が作品に表出されていることを強調されました。

講座終了後、受講者から「『大津順吉』は読んでいないので、今日の講義を参考にすぐに読んでみたいです」「年表と突き合わせて作品を読んだり、他の作品との関連性にも関心を向けて読んだりすると、より深い読みができそうです」との感想をいただきました。

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