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◇2014-10-13 (月)

秋期特別講座「白樺サロンの会」(全8回)の第7回を開催

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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座「白樺サロンの会~高畑サロン、ふたたび~」第7回を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために発会した"白樺サロンの会"の会員を講師に迎え開かれるものです。本日は、大阪教育大学名誉教授の梁瀬健先生に「続片輪螺鈿蒔絵手箱の流転」と題し講義を行っていただきました。

梁瀬先生は生物学がご専門ですが、他の分野でも研究熱心で、旧居の2階客間にあった観音像の行方を長年にわたって調べられたことがあります。本日は、同じく30年近く真相を追い続けられてきた国宝「片輪螺鈿蒔絵手箱」(国宝/東京国立博物館蔵)の流転劇を話されました。この話は以前の当館主催講座でも取り上げられたことがあるのですが、新展開があり、続編を改めて紹介されました。

「片輪螺鈿蒔絵手箱」は平安期のもので、先生が最初に目にされた古書『日本名宝物語』(読売新聞社、昭和4年)によれば、「江戸時代末の法隆寺の財政逼迫(ひっぱく)時、多額の寄進をした海の豪商銭屋五兵衛に謝礼として寺宝の手箱が贈られたが、五兵衛は密貿易罪で闕所(けっしょ/土地財産の没収)の末獄死、手箱は幕府から某大名へ下賜された」とあったそうです。

この大名の末裔が大正年間に手箱を「売り立て」に出し、石油王小倉常吉が26万円(現在の20億円以上)で落札したことは判明しましたが、先生はこの「某大名」に関心を持たれ追跡を始められました。すると『原色版国宝』(毎日新聞社/文化庁監修)に、その大名が雲州松平家旧蔵と出ていたそうで、先生は新聞コラムにそれを掲載されました。

ところがそれを読んだ東京国立博物館の職員が文化庁で発見した『売り立て目録』(東京美術倶楽部/大正8年)に、手箱は松平伊賀守御蔵品入札とあり、『東洋漆工史』(六角紫水)には、それが大阪の淀屋辰五郎闕所の折とされていました。「文化庁監修だからと信じたのですが、『原色版国宝』の記事は間違いで、鎌倉期の別の片輪車手箱と取り違えたようです」と先生。

また、このほど新たに見つかった古文書2通の一つ『宮下弁覚文書』には、手箱は享保4年に京都所司代松平忠周(信州上田城主)が、京都の深江庄左衛門闕所の時、銀28貫余り(現在の3,000万円)で落札したとあるそうです。もう一つの『翁草巻十』にも、深江庄左衛門らが闕所で遠島になった記述があり、先生は六角紫水説を誤りと見られました。

そして、「手箱の流転は、法隆寺→深江庄左衛門→松平忠周→小倉常吉→東京国立博物館 となりますが、法隆寺と深江庄左衛門の間にはさらに何人かの介在が考えられます」と締めくくられました。

講義後、受講生は「いつかこの手箱を見る機会があれば、今日の先生の話を思い出しながらじっくり鑑賞したいです」と話されていました。

次回は山口大学客員教授の橋元潤一郎先生による「相対論から解き明かす宇宙と生命」です。旧居の庭では秋明菊やだるま菊が秋の訪れを告げていました

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