◇2014-09-22 (月)
本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座「白樺サロンの会~高畑サロン、ふたたび~」第4回を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために発会した"白樺サロンの会"の会員を講師に迎え開かれるものです。本日は、姫路市立美術館学芸員の平瀬礼太先生に「《肖》《像》のはなし」と題し講義を行っていただきました。
先生は近著の『<肖像>文化考』(春秋社/2014年8月20日発行)に書かれた内容をわかりやすく話してくださいました。
はじめに、「《像》は形や顔などそのもの自体のビジュアルイメージで、《肖》は<似る><肖(あやか)る>であり、<不安定に揺れ動く><動揺して変化する>の意があり、似ているけれど<真>ではないという含みがあって面白い」と語義の説明をされました。
先生が問題にされたのは、内面の表現です。「人の多様性を一つの絵姿にした肖像は全人格を伝えるものではないが、ある意味、理想像として存在する」と話されます。また、似ているべき肖像ですが、日本では近世まで、似ていては命を落とすと忌み嫌う風習もあり、遺像が多かったということです。
そして肖像を介した多種多様な人間の営為を、戦時中から現代までの事件などの例をスライドで示しながら解説と考察を進められました。
講義後、受講生は「身近なものにまつわる考察は興味深く、今後は《肖像》を見る目が変わりそうです」と話されていました。
次回は同志社女子大学教授の生井知子先生による「志賀文学の技巧を探る――『剃刀』『城の崎にて』中心に」です。旧居の中庭ではギンモクセイが満開です。上品な香りをあたりに漂わせています。