学校法人奈良学園

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◇2014-09-15 (月)

秋期特別講座「白樺サロンの会」(全8回)の第3回を開催

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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座「白樺サロンの会~高畑サロン、ふたたび~」第3回を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために発会した"白樺サロンの会"会員を講師に迎え開かれるものです。第3回目は、同会代表であり相愛大学教授の呉谷充利先生に「柳宗悦と志賀直哉―日本のモダニズム―」と題し講義を行っていただきました。

呉谷先生は、当旧居の復元修復の監修もされた方で、本館並びに志賀直哉研究でも造詣の深い方です。本日は、講座のテキストにもなっている『りずむ』第三号(平成26年3月発行/白樺サロンの会)に寄稿の『柳宗悦と志賀直哉―民衆的工芸品と万暦赤絵―』をわかりやすく説明し、志賀直哉の内面の変化について考察されました。

直哉が関西に来たのと時を同じくして、多くの文化人が関西を拠点に作品の完成を見ています。先生は、柳宗悦、谷崎潤一郎、和辻哲郎らを例に挙げて、「彼らの作品を完成させたのは、紛れもなく関西の風土だと思います」と話され、その理由を西洋文化・美術との対比の中で論証していかれました。

そして「直哉は合理的な思考の持ち主であると同時に情念の世界の人でもあり、それは作品の『万暦赤絵』や『豊年虫』にも如実に出ています。彼が敬愛した谷崎とは正反対の作風ながら谷崎の『春琴抄』の耽美主義と重なりがあるように思う」と話されました。

高畑サロンの会の最年少メンバーであった柳宗悦の「民藝運動」は直哉にも共感を呼びました。直哉は『暗夜行路』の中で主人公の謙作に、宗悦の考え方の究極である「欣求(ごんぐ)浄土」「他力本願」について語らせていることから「志賀直哉と柳宗悦は根本の精神性において通じている」とされます。

次いで、直哉が「夢殿の救世観音を見ていると、その作者というようなものは全く浮かんで来ない」(志賀直哉全集 序)と書いていることに注目し、彼がロダンの「考える人」に感じた思いとの違いを解説し、その「無銘性」を突き詰めた宗悦と通じるものがあるとまとめられました。

「考える人」は、肉体と意識が分離(苦悩と筋骨隆々の肉体)しており、「救世観音」や「弥勒菩薩像」は、肉体と意識が融合、即ち大自然の悠久の営みだということです。それは、宗悦の言う「用美相即」(美と用は同じ)で、「無銘の世界」であり「諦念」でありながら大自然に行き着く「東洋の美の世界」だということです。そして「救世観音にそれを見抜いた直哉の洞察力はすごい」とその精神性の高さに触れられました。

講義後、受講生は「先生の書かれたものを読んだだけでは理解できなかったことが、今日はすっと頭に入ってきました」「次に<考える人>と<弥勒菩薩像>と対峙する時は今日の講義を思い出しながら鑑賞したい」と話されました。

次回は姫路市立美術館学芸員の平瀬礼太先生による「《肖》《像》のはなし」です。
旧居のはるか天高くいわし雲が広がり、季節の進行を感じられる日でした。

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