学校法人奈良学園

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◇2014-08-18 (月)

近代文学講座第5回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で近代文学講座「奈良ゆかりの文学」(全5回)の第5回を開催しました。講師は京都大学以文会会員で文学講師の植村正純先生です。

本日は、前回に続き、〔折口信夫と當麻・二上山〕のテーマの下、奈良を舞台とする小説『死者の書』(中公文庫)の7章から20章の最終章までを読みました。

先生は、物語の背景としての大津皇子事件<天武帝崩御後すぐに、その后・鵜野讃良皇女(後の持統天皇)が称制を執り、大津皇子が謀反を起こしたとして直ちに逮捕・処刑された>の概略を解説ののち、7章から20章まで要所を押さえながら読んでいきました。

平城京に大邸宅、奈良町に別宅を構えていた横佩家の〔郎女〕は、深窓の姫であり、美しいだけでなく周囲も教えることがないほどの賢さも備えていました。万法蔵院の庵室(當麻寺の前身)で『称賛浄土仏摂受経』の千部写経発願をし、写経に明け暮れる日を送ります。

滋賀津彦にまつわる長歌のなかで「私の子を産んでくれ...」というフレーズを思い出し、〔郎女〕は、畏(こわ)さの一方でほとばしるときめきをも感じ、「なも 阿弥陀ほとけ」と念じることで平常心を取り戻します。

俤びと〔彼の人〕は、4度も夢に現れ、〔郎女〕は「をゝ、おいとほしい」「おいとほしい。お寒からうに――。」と思うのでした。それが、蓮糸で衣を織って差し上げたい気持ちとなり、皆の協力の下に出来上がった布に、〔郎女〕は曼荼羅絵を描きました。傍目には曼荼羅でしたが、〔郎女〕は唯一人の色身の幻を描いたに過ぎなかったと結ばれています。

先生は、「ここに描かれているものは、<浄化・昇華>であり、<止揚>です。二つの相反するものがせめぎ合うことを続けるうちに、より良いものに育っていくことを言います」と解説されました。

そして、折口信夫独特の①文芸観(本来文芸の生まれる根源である欲望の超経験とか超常識といった形で表現するもの) ②宗教観(日想観/源信、新仏教/藤無染) ③ラブロマンス ④折口の祖父が飛鳥坐神社の養子であるなど、祖父の故郷としての地 ⑤夢に強い関心 ⑥ミステリー好き(分かり難い構成)という背景が考えられると説明されました。

「大津皇子の悲話と中将姫伝説を思い浮かべつつ受講しました。補講で折口信夫の巧みなストーリー展開の裏を教えていただけるのが楽しみです」と講座後に話す受講生もいらっしゃいました。

暑さがぶり返し午前中に30℃を越したこの日、旧居の庭では、蝸牛がまるで日差しから身を守るかのように柿の葉の裏にしがみついていました。

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