◇2014-06-30 (月)
本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で近代文学講座「奈良ゆかりの文学」(全5回)の第4回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。
今回と次回は、〔折口信夫と當麻・二上山〕と題し、折口信夫が奈良を舞台に書き上げた小説『死者の書・身毒丸』(中公文庫)を読みます。先生は「研究対象としては何度も読みましたが、読者として改めて皆さんと読み返していきたいと思います」と話し、講義に入られました。
作品は、歴史的事実を背景に織り込みながら20章から構成されたフィクションです。先生は、「奈良と當麻、あるいは両方が舞台となり、実況中継風や、語り部が語るという形態が取られています。ストーリーを確認しながら読み進めていきましょう」と、要所を音読し解説を加えられました。
第1章から6章までのあらすじを追いつつ、「彼の人(滋賀津皇子)」「耳面刀自(みみものとじ)」「磐余の池」「万法蔵院の庵室」(當麻寺の前身)「横佩家の郎女」などのキーワードに注目していきました。
多くの地名が出てくるのも同作品の特徴と話され、親交があった地名学者・池田末則氏(故人)の研究から、地名の読みや意味・由来についても講義くださいました。
また、舞台となった二上山裾の竹内街道について、芭蕉の『野ざらし紀行』と『笈の小文』では全く記述が異なることに触れられ、本テーマの伏線として興味深い展開が期待できそうです。
「本書は難しい漢字も多く、初めは読みづらいと思いましたが、読み進むにつれてぐいぐいと引き込まれました。先生のお話で、より深みが増しました」と講座後に話される受講生もいらっしゃいました。
旧居の庭では、連日の暑さの中、ギボウシの花のブルーが涼やかさを演出しています。