学校法人奈良学園

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◇2014-01-20 (月)

古典講読講座《伊勢物語Ⅱ》第3回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で《伊勢物語Ⅱ》第3回を開催しました。講師に京都女子大学国文学科教授の西崎亨先生をお招きし、月1回のペースで『伊勢物語』(日本古典文学全集/小学館)を"拾い読み"と称して読み解いていきます。

後期第3講の<いろは雑談>は、年末に先生が入手された竹久夢二による挿画が入った、吉井勇の『伊勢物語』を取り上げられて始まりました。

先生は、彩色刷りの5枚のうちの第二十三段「筒井筒」の挿画に注目されました。それは、すでに前期第4講で読み終えた段でしたが、その原作の挿画に無いものが3つ描かれています。それらは、丸い井戸、花の咲いた桐の木と、ツバメです。「夢二がどんな思いでそれらを入れたかを考えると、物語がより面白く読めるよ、という提案です」と、皆に問いかけながらひとつずつ考察を加えていってくださいました。

井戸と桐は、律詩や絶句などに「井桐(せいどう)」「井梧(せいご)」などと使われ、夢二には漢詩の知識もあったのではと考えられるとのことです。文芸表現としての桐は秋のものですが、花とツバメによって初夏を表し、また琴の材料でもあるから「琴瑟(きんしつ)の調べ」も意味し、結婚に向かう二人を祝福する意にも取れると。

受講生の中からは、「ツバメは、子作りや子育てを意味しているのでは」との声も上がりました。先生はそれも肯定して、「秋を避けたということは、<飽き>を避けるという夢二なりの駄洒落でもあったかも・・・」と皆を笑わせられました。「平安時代のものだけでなく、時代を経てどう受け継がれていったかを見るのも興味深いです。しかも訳者によって違いますから、味わい深い」と力説されました。

続いて、『伊勢物語』(嵯峨本)に戻り、第三十九段「源の至」を読みました。この段は、<蛍火で女性を見る>という内容なのですが、その歌のやりとりの注釈は源至(みなもとのいたる)が葬送の場で蛍の灯りで女性を垣間見ようとしたことが不謹慎だと非難される内容です。

王朝時代、蛍火で女性を垣間見る雅な趣向があり、歌には多くの解釈や説があるのですが、先生は、柩(ひつぎ)の「出でて去なば」とか、蛍を死人の「魂」と擬人化しているとすれば、至の行為はさほど批判されるものでもないと説かれました。至の直前の行為「なまめく」の意も現代と異なり、しっとりとして美しい上品さを表すものなので、そういった表記への喚起を促されました。

「それにしても、最近は風情を解さない学生が増えている。季節感抜きに日本文学を読むなと言いたい」と苦笑されて、本日の講座は終了しました。帰り際、先生に「もっとまじめに丁寧に古典を読まないといけないのですね」と話をされた受講生がありましたが、「いやいや、娯楽本として気楽に読んだらいいのですよ。訳本は、学者のを避けて作家物のほうがオススメです」と、楽しいやり取りをされていました。

本日は大寒、茶室前の蹲(つくばい)に氷が張るほどの寒さでしたが、新年が明けて初の講座となった教室では、「お元気でしたか」「今年もよろしく」などの声がにぎやかに飛び交いました。

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