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◇2013-10-18 (金)

平成25年度 秋期特別講座
「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」(全7回)の第6回を開催

  • 平成25年度 秋期特別講座<br>「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」(全7回)の第6回を開催
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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」第6回を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために、6年前に発会した"白樺サロンの会"有志を講師に開かれるものです。第6回目の本日は、姫路市立美術館学芸員の平瀬礼太先生に「傷痍軍人と美術」と題し講義を行っていただきました。

平瀬先生は、「皆さんは"傷痍軍人"という言葉をご存じですか。戦後世代の僕は子どもの頃に見た物乞いする傷痍軍人の姿に、偏見かもしれないですが"怖い"というイメージを抱きました」と始められました。その"傷痍軍人"をテーマに持ってこられたのは、「戦争時代の美術品を研究する機会があり、その時代背景を知って作品を見ることで認識が変わったから」とのことでした。

戦争中、傷痍軍人慰問のための作品を全国の美術家に募ったところ短期間に3500点あまりが寄せられました。それらは東京府美術館ですべて展示された後、全国の病院に寄贈されたそうです。それは、療養中の軍人に安らぎと意欲を与えるためであり、国威発揚のためであったとのことですが、先生が着目されたのは彫刻会の重鎮・朝倉文夫が第四回新文展に出品した『再起の踊』(資料写真の左上)の図版でした。

鉄脚(義足)の軍人が楽しそうに踊っている写真、しかも縦136cm、横191cmもの浮彫の大作を見て「僕は始め、なんて珍妙な作品だろう、と思いました。しかし、朝倉の作品意図や作品制作の背景を知ったことで思いは変わっていきました」と続けられます。

当時、義足の生みの親として知られる保利清軍医少佐は、脚を失った兵士たちもスポーツや踊りを楽しみ、産業に従事できる自信と希望を持たせるため、鉄脚の軍人たちの富士登山や関西行脚をやってのけたといいます。そして「郷里の盆踊りでも鉄脚で踊れば人気者だぞ」と激励して義肢の自由度の増進を図りました。そんな事情がその作品の背景にあったとのことです。

「これは美術品としていわゆる"いい作品"ではないかもしれません。しかし、良い・悪いの発想ではなく、その時代に生きていくことを考える意味が大きい作品です」と強調され、「戦時中の金属供出でおそらく残っていないかもしれませんが、実在するならぜひ見てみたい」と結ばれました。

台風26号の通過後、空気が一気に冷え込み肌寒さを覚える本日でしたが、受講生の皆さんは先生の話に熱心に耳を傾けていらっしゃいました。旧居の玄関には、山野草の会から寄せられた見返り草の鉢も加わり、秋らしい風情で訪れる人を迎えています。

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