学校法人奈良学園

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◇2013-10-14 (月)

古典講読講座《伊勢物語》第5回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で古典講読講座《伊勢物語》第5回を開催しました。講師に、京都女子大学国文学科教授の西崎亨先生をお招きし、本年10月まで月1回のペースで『伊勢物語』(日本古典文学全集/小学館)を"拾い読み"と称して読み解いてきました。

第五講の本日も、<いろは雑談>から始まりました。先生は、9月20日付産経新聞に「倭人が始めて書いた文字」という見出しで石川県能美古墳から出土した須恵器に「未」と「二年」の刻書があったという記事から、古代の文字についてのうんちくを語ってくださいました。

まず、三世紀の出土品で「奉」「田」「竟」「山」「大」などの文字がある土器の写真を示しながら、「竟(鏡)」や「委(倭)」のように金偏や人偏を略した省文(せいぶん)など韓国や中国の影響を受けたと見られるものや、見よう見真似でへら書きしたり刻書したりして書き順が異なるなど当時の陶人の識字の程度がわかる例を挙げられました。

そして「記事にあった文字は、3~5世紀の間に日本人が書いたであろう最古の文字と思われます」と話されて、『伊勢物語』の講義に入られました。

さて、『伊勢物語』は最も有名な二十三段の「くらへこしふりわけかみ」で、竹馬の友が大人になって互いに求愛している内容ですが、先生は「女の返歌にある"くらへこし"てきたのは何でしょう?」と問いかけられます。そして現代語訳6例を挙げ、「すべて振り分け髪の"長さ"と訳していますが、当時"たけくらべ"はあっても"かみくらべ"は民俗学的になかったようですし」と続けられます。

「そもそも"比べこし"の"比"にはどんな意味があるのでしょうか。漢字は音(オン)に当て字で表記されることが多く、そこから意味も異なってきます」と、"比"には「クラブ」と「タクラブ」の読みがあることを示されます。そして「では"タ"は? 「ナビク」と「タナビク」、「モツ」と「タモツ」、「ハカル」と「タバカル」・・・、ちょっとの違いが日常会話でも誤解を生み、相手の機嫌を損なうことになりかねません」と、話が展開します。

続いて『土佐日記』の「としごろよくくらへつるひとびと」を例に、これは「この数年来、ごく親しくつきあっている人々」の意であること、「山川」の清音読みと濁音読みで意味がまったく異なる例など、次々と言葉の妙味を紹介していかれます。「さらっと読めばそれで済む段ですが、ちょっと深入りしてみると面白いのです。やさしいものほど見過ごすものが多いですよ」と先生。

例によって、先生の言葉の知識の引き出しが次々と開かれ、その一つひとつに受講生の皆さんはうなずきながら聞き入られました。受講者から、「ふりわけ髪は、髪の長さではなく、地面から断髪の下端までの丈と読めばいいのでは?」などの質問も出、それについても考察がありました。

なお本講義は、今後も「後期伊勢物語」として続行の予定です。先生から「筋よりも、言葉遣いや表記に注目しての読み方をしていますが、こんな感じでいいですか」と問われ、皆さんに異論はない様子でした。

秋の空気に一変した本日でしたが、旧居の玄関では「山野草の会」から持ち寄られたルリスズカケ、山ラッキョウ、ウメバチソウなどが訪れる人々を初秋の風情で迎えています。

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