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◇2013-10-11 (金)

平成25年度 秋期特別講座
「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」(全7回)の第5回を開催

  • 平成25年度 秋期特別講座<br>「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」(全7回)の第5回を開催
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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」第5回を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために、6年前に発会した"白樺サロンの会"有志を講師に開かれるものです。第5回目の本日は、大阪教育大学名誉教授の梁瀬健先生に「続 片輪車手箱の流転」と題し講義を行っていただきました。

梁瀬先生は、まず教室のムード作りにと手品を披露してくださいました。組み合わせたスプーンとフォークを、ガラスコップのふちに置いたマッチ棒の上でバランスを取らせるというものです。さらにマッチに火をつけてもナイフ・フォークは落ちず、教室中が沸き立ちました。「これは手品というより、単なる物理現象ですがね。今日の夕食時にでもやってみてください」と笑われて講義に入られました。

先生は、「片輪車手箱の話ですから」と、資料としてその絵はがきを受講者全員に配られましたが、なんと切手まで片輪車手箱の図柄のものが張られているというサプライズで、一同大喜びでした。

さて、その「片輪車蒔絵螺鈿手箱」(平安時代/東京国立博物館蔵)ですが、先生は「以前調べた流転劇に誤りがあったのでそれを正したい」とのことでした。その流転とは、法隆寺にあった同手箱が江戸時代の財政難の折、多額の寄進をした海の豪商・銭屋五兵衛へ渡り、五兵衛闕所(けっしょ)の折、幕府から<ある大名>へ渡り、それを石油王の小倉常吉(大正時代)が購入(26万円/現在の20億円以上)、子孫が東京博物館へ寄贈したというものです。

<ある大名>とは雲州松平不味であり、当時12万両(現在の120億円)の献金をしたという松江藩にたどり着きました。先生がその調査書を東京博物館に持ち込まれたところ、工芸室長が宮内庁目録を精査、松平は松平でも徳川家と同筋の松平伊賀守、すなわち信州上田藩ということがわかったのです。よく似た手箱が二つ存在したための間違いだったようです。

先生は、自らあちこち訪ねる労と共にネット検索も丹念に行われ、法隆寺からは銭屋五兵衛ではなく米問屋の淀屋辰五郎に渡り、そこから松平伊賀守、そして小倉常吉へと流転を重ねたものだということが判明したそうです。先生は当旧居にあった幻の仏像の行方も突き止められた方ですが、いつも「これはなぜ? ではそれは?」と多岐にわたって調べていかれるとのことで、受講生の皆さんは、それにも感服されていました。

本題のあと、第三のサプライズがありました。先生が趣味で収集されている美術品のはがきの中から、切手まで揃いを貼ったものを、抽選で受講者全員にプレゼントしてくださいました。上村松園の「序の舞」「母子」、鏑木清方の「たけくらべ」ほか、雪舟、伊藤若冲、狩野永徳、喜多川歌麿・・・、まるで美術館巡りをしているような説明と共に一人ひとり手渡されました。

講義中、当時の通貨と現在の貨幣との換算を示し、書物やコピー類など視覚的な資料の提示が多い講義で、受講生の皆さんは「とてもわかりやすかったです」「美術作品をたくさん見せていただいて楽しかったです」と話されていました。

夏が逆戻りしたような暑さの本日でしたが、旧居の南庭では秋明菊が秋を告げています。

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