学校法人奈良学園

ニュース & トピックス
ニュース & トピックスニュース & トピックス

ニュース & トピックスニュース & トピックス

◇2013-09-09 (月)

古典講読講座《伊勢物語》第4回を開催

  • 古典講読講座《伊勢物語》第4回を開催
  • 古典講読講座《伊勢物語》第4回を開催
  • 古典講読講座《伊勢物語》第4回を開催
  • 古典講読講座《伊勢物語》第4回を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で古典講読講座《伊勢物語》第4回を開催しました。講師に、京都女子大学国文学科教授の西崎亨先生をお招きし、本年10月まで月1回のペースで『伊勢物語』(日本古典文学全集/小学館)を"拾い読み"と称して読み解いています。

第四講の本日も、<いろは雑談>から始まりました。九月九日(重陽の節句)にちなみ、数字のお話です。「九もじ(酒)」「しゃもじ」「酢もじ(寿司)」「おめもじ」など、中世の宮中女官の間では、ストレートに表現するとはしたない言葉に<もじ>をつけたものを女房言葉といいます。他にも「おてもと」「おひや」「おあし」も例に挙げられ、そのたびに受講生から「へぇ~!」の声が上がりました。

他に、「陽」と「陰」で南と北の方角を表すという興味深い内容にも触れられましたが、「これをやりだすときりがないですから」と笑って、「要するに今日は九月九日で、めでたい数字(中国思想では奇数は縁起のよい陽の数とされ、中で一番大きなのが九)"九"が重なる重陽の節句です」と結ばれて、『伊勢物語』の講義に入られました。

さて、『伊勢物語』は十段の「たのむの雁」です。ここで先生は、『伊勢物語』は仮名本と思われていますが、真名(漢字)本『河海抄』【上記写真】が存在し、その表記(漢字の当て方)を見ることで、当時の人々がどういう理解をしていたかを知り得ると話されました。

本文の冒頭で初めて出てくる「武蔵の国」に注目を、と先生は喚起されます。「今までは<住むべき国を求めて>とあったのに、いよいよ落ち着くべきところがはっきりしてきたんですね」と。そして「よばひ」の言葉。「よば」の<ふ>は継続的に何回も行う意を表す助動詞で、現代の「かたらふ(かたらう)」も同じとのことです。

続いて「ここで面白いのは<父~ 、母なむ~>とあることです」と指摘され、「父は~、母~」と「父は~、母~」の違い、さらに本段のように「母なむ」とあれば、母にはもっと強い意志があったことを示していると話されました。

本段のタイトルにある「たのむ」でも興味深い講義がありました。現代語訳には「田の面」と訳されていますが、果たしてそれでいいのかと。先生は「田」と「田んぼ」の意味の違いを問いかけられ、単音節語は「っぱ」「っか」「っぽ」など話し言葉では誤解されやすいので、文章言葉(田)と口語言葉(田んぼ)を区別してこういう表現をするのですと説明されました。

「たのむ」の<む>は「无」の漢字を書く助動詞ですが、それが書写されたときの時代により<ん>の場合もあり、<ん>となっている場合は鎌倉時代以降とのことです。ここでも、「<む>は発音の消エネ言葉です」と、<NAMBA(難波)>や<SENNICHIMAE(千日前)>などを例に表記の違いの話が聞けました。

「むこがね」の返しの歌で「たのむのかりを いつ忘れむ」と反語の<か>が登場しますが、その反語についても考察がありました。「<か>と<や>は疑問・反語を表す係助詞と辞典にありますが・・・」と、万葉集252と3607の類似した歌を例に、辞典の説明にとどまらない深読みを続けられました。

話は、言葉のあいまいな使用例「疑問」と「質問」、「語彙」と「語」の違い、敬語のややこしさ、家族間での「あなた」づかいなどにも及びましたが、『ここの段でのミソは、<母なむ>の<なむ>で、母親が前面に出ているところです』とまとめられました。

講義中の受講生のうなずきに対し、「物語は筋を追うだけでなく、四方八方いろんな角度から言葉のちょっとした違いを見ていくという丁寧な読みをしたほうが面白い、というのはこういうことです」と、今日も強調されました。

講座終了後、「本論はもちろん、先生の言葉の玉手箱から飛び出す、余談・雑談に心服です」「楽しいです。言葉の一つひとつを手がかりに読む訓練を自分に課さなくては、と思いますね」といった感想を多くの方からいただきました。

ツクツクボウシが鳴き、先日までの猛暑が嘘のような気温に落ち着いた本日、旧居の玄関では「山野草の会」から持ち寄られた珍しい白のナンバンギセルが、教室では庭で咲いたフヨウとムラサキカッコウアザミの花が皆さんを出迎えました。

▲ページトップ

Copyright (C) Naragakuen. All right reserved.