学校法人奈良学園

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◇2013-07-08 (月)

古典講読講座《伊勢物語》第3回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で古典講読講座《伊勢物語》第3回を開催しました。講師に、京都女子大学国文学科教授の西崎亨先生をお招きし、本年10月まで月1回のペースで『伊勢物語』(日本古典文学全集/小学館)を"拾い読み"と称して読み解いています。

第三講の本日は、<いろは雑談>として、京都市の平安貴族邸宅(堀河院)跡から出土した土器の小皿に墨書されていた「いろは歌」の話で始まりました。つたない筆遣いと書き間違いなどから子どもの手習いのものだろうという報道2紙を例に挙げ、いろは歌は僧が経典の読み方を学ぶために工夫されたものだと話されて、万葉仮名で書かれた『金光明最勝王経音義』を回覧してくださいました。その巻末には日本で2番目に古い五十音が書かれていました。

当時の手習いは、前回の講義で出た「難波津の歌」が多く、現代の仮名書の練習に多用される「いろは歌」は少ないそうです。「難波津の歌」は連綿の稽古のためだったということです。

さて、『伊勢物語』の九章の「東下り」中、「あづまのかた」とありますが、古今和歌集にこれとよく似た形の「あづまのかた」とあるがどう違うのか、「はるばるきる」ではなく「はるばるきる」とした「伊勢物語」の作者の思いは? と、助詞や助動詞の違いに焦点を当てた講義が続きます。

「きる」も「きる」も同じ<完了>を表すのですが、「きる」はまだこれからも続く意があり、即ち都のいとしい女性への想いを引きずる作者の"傷心の旅"が見えるとのことです。先生は「助詞は付属品のように扱われますが」と、「みんなだいすきアンパンマン♪」を例に、アンパンマンの博愛主義と皆から好かれているとの二通りの取り方ができると受講生を笑わせられました。

当て字違いでは、「水無月」「神無月」を例に、本来は「水な月」「神な月」で「な」は「まこ」と同じ「の」の意なのに漢字を当てたばかりに問題を引き起こしたと、文字表記の大切さを説かれました。

また、「涙落として」の「落とす」(他動詞=意図的にする)と「落つ」(自動詞)の違いを、「電車の扉が閉まります」(自動詞)と「閉めます」(他動詞)や「財布落とした」「単位落とした」を例に、他動詞を自動詞的に使うなど、日本語の自動詞・他動詞の区別の曖昧さについても触れられました。

続いて「ほとぶ」(ほとぼす)の表現は伊勢物語の1例のみであるから研究課題になること、「宇津の山」と「八橋というところに」の表記違いの意味、「修行者あひたり」と助詞抜きが表す意味合い、「かかる道は___いかでか・・・」と言い止(さ)し表現の効果、など表記・表現の違いを丁寧に拾っては「何故?」の眼で読み解いていく面白さを教えていただきました。

近畿地方の梅雨明け宣言があったこの日も猛暑で、受講生の皆さんは汗をぬぐいながらも、次々と展開される日本語の面白さに、「助詞や助動詞ってこんなにすばらしかったのですね。脇役じゃないどころじゃですね」「改めて言葉遣いの大切さを学びました」と感想を話されました。

旧居の庭では、紫陽花、ギボウシに続き、甘草(カンゾウ)やモジズリ(ネジバナ)が咲き始めました。池では、先月産卵があったモリアオガエルのおたまじゃくしが次々と蛙になっては森に帰っています。

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