学校法人奈良学園

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◇2013-05-20 (月)

平成25年度 古典講読講座《伊勢物語》第1回を開催

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ホオズキ
シライト草
本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で古典講読講座《伊勢物語》第1回を開催しました。講師に、京都女子大学国文学科教授の西崎亨先生をお招きし、本年10月まで月1回のペースで『伊勢物語』(日本古典文学全集/小学館)を"拾い読み"と称して読み解いていきます。

初回の本日は、「初冠 いちはやきみやび」でした。先生は資料として上記の本のプリントと共に、学習院大学蔵『天福本 伊勢物語』(武蔵野書院)のコピーも併用されました。それは、先生の文学理解の理念でもあり、講義のコンセプトでもあるのですが、「仮名書きは仮名のままに、つまり作者の表記通りに読むと、そこから面白いことが読み取れるのです」とのことです。

先生はまず、漱石の『坊ちゃん』をその一例として挙げられ、「"赤シャツ"という言葉が何度も出ますが、原文には一箇所だけ平仮名表記があり、それはカタカナが読めない下女の清への手紙の中なのです」。これを現代版では「赤シャツ」に統一していますが、それでは漱石の思いやりが読み取れないと先生。

「言葉を通して遊んでる私の雑談に付き合ってください」と、自己紹介の挨拶で笑わせられた先生は、「初冠」の4文を、単語の一つひとつについて、その語源をはじめ、仮名表記と漢字表記、濁点の有無や音便使いによる意味の違いを説明されながら進まれました。ご専門が、国語史・語彙の研究や漢文訓読ということで「すべて、"何故、どうして?"と思えば、いろいろなことが見えてきますよ」とのことです。

仮名テキストには、「むかし をとこ うゐかうふりして ならの京かすかのさとに しるよしして かりにいにけり そのさとに いとなまめいたる をんなはらからすみけり このをとこ かいまみてけり・・・」とあります。

「むかし」と「いにしえ」、「をとこ」と「をのこ」、「かすか」と「春日」の違い、「かり」を「狩」と表記すれば冬の「狩」に限定される、「なまめきたる」(ハレの言葉)を「なまめいたる」(ケの言葉)とすることで女性たちのくつろいだ雰囲気を出しているのだそうです。「わかむらさき」が「若紫」(相手)と「我が紫」(自分の衣)となるように、特に掛け言葉は絶対に仮名表記であるべきとも説かれました。

「なあなあで読まんとこな。せっかく人が書いたものだから丁寧にきちんと読んでいこうね」と、いつも学生さんにおっしゃっている言葉通り、当セミナーでも、(古典)文学が面白くなる読み方のポイントを突かれた第一講でした。

受講生の皆さんは、先生が他の文学作品や雑学から引用されてのわかりやすい説明に、一つひとつうなずかれたり、先生の問いかけに答えたりしながら聞き入られていました。終了後「とってもよく理解できました。作品読解の上で大事なことを教わり、『伊勢物語』はもちろん、他の作品も興味深く読めそうです」と話されました。

旧居の南庭では、今年もチリアヤメ(写真右上)がかわいらしい姿を見せました。ホオズキ(同左下)が白く可憐な花をつけ、鉢植えのシライト草(同右下)も糸くずを束ねたような花を咲かせました。

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