学校法人奈良学園

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◇2013-03-04 (月)

後期近代文学講座第8回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で後期近代文学講座「文学表現の諸相」(全8回)の最終回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

本講座では、「文学表現の諸相」をいろいろな作品から読み取ってきました。最終回の本日は、芥川賞受賞作家・高樹のぶ子が取り上げられ、作品と作家をつなぎながらその代表作の抜粋が読み進められました。

先生はまず、高樹のぶ子(1946年生まれ)は山口県防府市出身、英文科卒業ながら司法試験を受け、離婚と再婚歴があり、スキューバダイビングや海外取材経験が豊富であることを作品理解の伏線として話されました。

最初に『時を青く染めて』のプロローグを読みました。同作品は、一人の女を巡る二人の男の葛藤の物語ですが、視覚・聴覚など感性と知性の豊かな表現で、読み手をぐいぐい物語の中へ引き込んでいきました。受講生一同、スキューバダイビングの経験なくしては描けないリアルさの絵画的・象徴的な表象を味わいました。

次に今の作家像に近い作品として、『100年の預言』に進まれました。その冒頭「アカシアの六月」を受講生が黙読後、先生が要所を押さえていかれます。

そしてこの作品の特徴を(1)「バラーダ」が主旋律となって奏でるようにストーリーを構成した<音楽小説>であり、(2)受動的・散文的な男と能動的・詩的な女の<恋愛・性愛小説>の色合いも持ち、(3)ルーマニアと日本の金沢を舞台にしたストーリーテラーでありながら<時代・歴史・社会小説>の性格も併せ持つ とまとめられました。

「精神、哲学、美的表象(象徴)と詩と散文が融合したような作品です。美的表象で高樹のぶ子の右に出る者はいません」と先生。続いて『幻の町』『紅葉狩』『久しぶりのヘミングウェイ』『あの日のキリマンジャロ』『裏側』などを読みました。

『紅葉狩』では「確かに彼女の文章だなという気がしますね」とのコメントがあり、受講生は総じて広い視野と広い舞台を描いた作品が多いことを感じ取りました。『裏側』の解説後、「この作家は"水の中は感性の世界で、水の上は理(理屈)の世界"として、その二つの世界をない交ぜにしたすばらしい作品世界を創り出している」と話されました。

終了後、館長から「50回にも及んだ近代文学講座ですが、ひとまず終了します」との挨拶とともに、植村先生に「ハイレベルな内容の講座をありがとうございました」と謝辞が述べられました。受講生も大きな拍手で感謝の意を伝え、「楽しい講義でした。これからは月曜日が寂しくなります」と、多くの方が名残を惜しみながら教室を後にされました。

旧居の南庭では梅の花がほころび始め、見学に訪れた人が庭でのどかに記念撮影をする姿も見られるようになりました。

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